TSMCが、人工知能(AI)を中心とした先端半導体の需要の高まりを受け、台湾南部の高雄市で建設中の新工場に、従来計画していた28nmプロセスではなく、最先端の2nmプロセスを導入する可能性について複数の台湾メディアが7月17日付けで報じている。量産時期は2025年下半期の見込みで、2nmが導入される予定の新竹科学園区の新工場とほぼ同時期になるとみられる。

この話題の情報源とみられる高雄市政は、すでにTSMCから連絡を受けて準備を始めているという。TSMCはこの件について、一切コメントは控えているが、現在、7月20日に2023年第1四半期決算の説明会を予定しており、同説明会にて何らかのコメントが出る可能性がある。

高雄工場は、2022年下半期に着工した新工場で、当初は7nmプロセス(のちに延期決定)と28nmプロセスを予定していた。2nmプロセスになると、電力消費量の多いEUV露光装置を多用することになるため、高雄工場の消費電力は従来計画より大幅に増加することになるため、環境影響評価(環境アセスメント)の差異分析をやり直す必要が出てくるという。

2nmプロセスは、新竹、高雄、台中の3か拠点で量産へ

TSMCの2nmプロセス工場は、第一弾として本社近くの新竹郡宝山郷に設置される予定で、TSMC社内ではFab 20と呼ばれ、4つの製造棟(P1~P4)の建設が計画されている。すで最初の製造棟であるP1の建設が進められており、2024年の試作、2025年の量産開始を予定している。

TSMCのサプライチェーン関係者によると、TSMCは装置メーカーに対し、2024年第3四半期に2nmプロセス関連装置の高雄工場への納入を開始するよう通告したとされており、高雄工場の2nmプロセス導入はFab 20からほんのわずかの遅れでの対応になるとみられるという。

さらに同社は現在、台中市の中部科学園区にも2nmの生産拠点を設けることを目指し、ゴルフ場として使われている土地の取得を進めており、年末までに土地の引き渡しの実施が期待されているという。

なお、TSMCは現在、3nm/4nmプロセス採用デバイスの量産を台南市の南部科学園区にて開始済みなほか、米国アリゾナ州でも2024年ならびに2026年より開始する予定である。5nmは台南、7nmは台中市の中部科学園区がそれぞれ量産を担当しているが、2nmについては台湾域内の3か所で量産が行われるのという異例とも言える取り組みであり、同社が2nmに強い意気込みをかけていることが感じられる。

台湾の一部の半導体業界関係者からは、Samsung ElectronicsやRapidusといった後続のファウンドリが2nmを本格的に立ち上げる前に、業界の2nm需要を総取りしてしまおうとしているのではないかとの見方がでている。