プラネタリウム全国大会でのよびかけ

  • 6月13日に倉敷で行われた「全国プラネタリウム大会2023・倉敷」で。オレナさんと有志メンバーたち。

    6月13日に倉敷で行われた「全国プラネタリウム大会2023・倉敷」で。オレナさんと有志メンバーたち。(提供:三島和久さん)

西さんが当初9月に実現したいと思った投影が、実際には2023年3月になったように、言葉や文化の壁を越えて魅力ある番組を作り上げるには時間がかかる。全国のプラネタリウムでオレナさんが活躍するにはどうしたらいいだろう。

オレナさんのメールを最初に受け取った大川さんは、仲間たちと相談。まずはオレナさんのことをもっと詳しく知ってもらわなければ。そこでJPAが発行する会誌に、ハルキウプラネタリウムやオレナさんの仕事について寄稿してもらうことを編集委員に提案し、2023年1月に発行された。

そんな努力が少しずつ実り、各地の関係者の努力もあって、2023年春からオレナさんの投影機会が少しずつ増えていった。オレナさんは日本のプラネタリウムについて「素晴らしい。日本の優れた技術、とてもオープンで誠実な人たちが大好きです」と感謝する。「プラネタリウムに入ると、自分は生きていると感じます。頭上には澄み切った空があり、爆弾が落ちることもない。番組を投影中、日本の観客の方たちを見ると、安らぎと喜びを感じます」と。

だが2023年5月末時点でオレナさんによる投影は4館にとどまっている。そこで大川さんや西さん、川崎市青少年科学館の田中里佳さんら有志は、2023年6月半ばに倉敷で開催された全国プラネタリウム大会を絶好のチャンスと捉えた。「全国のプラネタリウム関係者が一堂に集う大会で、オレナさんの解説を多くの人に聞いてもらおう」と企図したのだ。

狙い通り、倉敷でのオレナさんと有志7名の発表は、テレビなどでも取り上げられ大成功を収めた。その効果もあって、各地のプラネタリウムでオレナさんの投影を実現したいという動きが広まっている。

大川さんら有志は情報交換グループ「One Sky for All」を立ち上げ、全国各地で投影実現を目指す人たちをサポートする。ここまでするのは、オレナさんをきっかけに彼ら自身がプラネタリウムの価値を再認識したからだ。「みんなで同じ星空を見上げながら、『人類は地球に住む家族』という視点に立てる。今までにないプラネタリウムの連携、深まった有志との繋がりも含めていろいろなことに気づかされた1年でした」。大川さんはそうふり返る。

最後にオレナさんからのメッセージを。「プラネタリウムを通して伝えたいのは、私たちには共通の1つの家、地球があること。そして空は繋がっているということ。私たちは本当に善良に生きなければいけないということです」。オレナさんの姿を通して、私たちが改めて知ることは多い。その気づきが全国に広がるように願っている。

  • 「日本のプラネタリウム関係者に出会えて本当に幸せです。私が日本に来るきっかけとなったのは戦争だったという事実さえなければ、私は世界一幸せな人間になっていたでしょう」と語る。

    オレナさんは「日本のプラネタリウム関係者に出会えて本当に幸せです。私が日本に来るきっかけとなったのは戦争だったという事実さえなければ、私は世界一幸せな人間になっていたでしょう」と語る。(撮影:大川拓也)