東京大学(東大)と三井不動産は7月3日、首都圏最大級の屋外ロボット開発検証拠点「KOIL MOBILITY FIELD」にて、走行中給電用コイルを埋設した走行レーンを新設し、フィールド検証実験を開始したことを発表した。
2021年度における日本のCO2排出量のうち、自動車からの排出量は約15.1%にのぼり、欧州では自動車に関わるCO2排出量を厳しく制限する規制が行われる見通しだ。その動向を受け、世界中の自動車メーカーが電気自動車(EV)の開発・普及を推進しているが、近い将来には動力源となるバッテリの供給不足が懸念されている。
その解決策として、より少ないバッテリ搭載量でEVの航続距離を確保するため、走行・停車中に路面から電力を供給するための技術開発が行われている。同技術の開発により、以下のメリットなどが期待される。
- 電池の小型・軽量化による車両価格の低減
- 電池の軽量化による電費(電気料)の改善
- 充電時間を含めた移動時間の削減
- 電池容量の低減による電池作成時の発生CO2量削減
東大の藤本博志教授らの研究グループと、共同研究機関である三井不動産は、これまでの共同研究において、KOIL MOBILITY FIELDを活用し、走行中給電の早期実用化に向けた研究開発を進めてきた。そして今回、さらに研究開発を加速させるため、走行中のEVに道路から給電する走行中給電用走行レーンを新設したとする。
従来の走行レーンでは、路面上に設置された送電コイルからEVへの充電を行っていた。一方今回敷設された新走行レーンでは、道路工事や路面温度などの環境条件に対応できるSWCC製の送電コイルを道路に埋設し、充電設備が路面に現れない状態を実現し、より社会実装に近いものになったとしている。
今回埋設された送電コイルは、60秒間の充電により約6km走行できると試算されている。社会実装に向けては、送電コイルを市中の交差点停止ライン30m付近に埋設し、信号待ちの間にEVへの充電を行うことでより大きな効果が生まれることが期待できるという。
将来的に、6km走行する間に60秒間の充電が可能なインフラ整備や街づくりを進めることができれば、特定の設備を用いて駐車しながら充電をするのではなく、断続的に充電することで、EVバッテリの賞味消費電力をゼロにでき、小型バッテリだけで連続走行が可能になるとする。
東大と三井不動産は、2023年度に柏の葉エリアにて公道での走行中給電の実証実験を行うことを計画しており、今回の新走行レーン敷設は、その実証実験の実現に近づくこととなるとしている。また、走行中給電システムの研究開発を行う企業や大学などの期間は、東大と共同研究パートナーとなり、かつKOIL MOBILITY FIELDの会員になることで、新走行レーンを利用できるようになるとした。
なお、今回新設した走行中給電レーンを活用した研究成果については、「2023 IEEE Third International Conference on Industrial Electronics for Sustainable Energy Systems」にて発表予定だとしている。