新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は6月27日、AGC、大陽日酸、産業技術総合研究所(産総研)、東北大学と共同で、実生産炉でのアンモニアを燃料に利用したガラス製造の実証試験に成功したことを発表した。

ガラス産業を含む素材産業の製造工程における二酸化炭素(CO2)排出量の削減は、日本が掲げる2050年のカーボンニュートラル実現に向けた課題の1つとなっている。現在ガラス製造の原料溶解工程では、炉内温度を1600℃以上に保つため、天然ガスや重油などの化石燃料が使用されており、環境負荷が低い燃料を使った革新的なガラス溶解技術の開発が急務となっている。その点、アンモニア燃焼では窒素酸化物(NOx)こそ排出するものの、そのほかに生成されるのは水のみであり、CO2を排出しない点が期待されていて、今回のような製造業だけに限らず、火力発電でもアンモニア燃焼の研究開発が進んでいる。

そうした中でNEDOが2021年度から実施しているのが、「燃料アンモニア利用・生産技術開発」だ。そしてその一環として、AGCや大陽日酸など4者と共同で、2021年12月から2026年3月までの事業期間を設け実施しているのが、「工業炉における燃料アンモニアの燃焼技術の開発」だ。

アンモニアは、上述したように燃焼でCO2を排出せず環境負荷が小さいことに加え、化学肥料用途を中心としたサプライチェーンがすでに構築されており、貯蔵や輸送に関して大きな障壁がないことも優れた点だとする。ただし燃料として利用する際は、NOxが排出されてしまうことに加え、従来の重油や天然ガスと比べて火炎温度が低いことが課題となっている。

それらの課題を解決するため、今回の事業では、産総研と東北大が中心となって、アンモニアを酸素燃焼した際の火炎温度の上昇と、NOx生成特性の解明を進めることで、低NOx燃焼技術の開発が進められている。またそこから得られる知見を活用し、大陽日酸が低NOx燃焼技術を実装した専用バーナーの開発を担当している。そしてAGCは、ガラス溶解炉におけるアンモニア燃焼技術の事前影響評価を実施中だ。

そして2023年6月18日と19日の2日間にわたって、実生産炉であるAGC横浜テクニカルセンターの建築用ガラスを製造するガラス溶解炉に、大陽日酸が開発した、多段燃焼により急激な火炎温度の上昇を防ぐバーナーを1対導入し、その燃料としてアンモニアを利用した世界初の実証試験を行ったとする。

  • (左)今回実証試験を行ったガラス溶解炉。(右)燃料アンモニア貯蔵タンク。

    (左)今回実証試験を行ったガラス溶解炉。(右)燃料アンモニア貯蔵タンク。(出所:大陽日酸プレスリリースPDF)

同実証試験では、さまざまな条件において従来の燃焼方法と比較し、ガラスの品質や炉材への影響、火炎温度、炉内温度、NOx排出量の抑制効果などが検証された。結果として今回の試験では、ガラス溶解炉の温度を維持しつつ、排ガスに含まれるNOx濃度が環境基準値を下回る結果が得られたという。

  • ガラス溶解炉内部のバーナー火炎。(左)都市ガス100%での純酸素燃焼。(右)アンモニア100%での純酸素燃焼。

    ガラス溶解炉内部のバーナー火炎。(左)都市ガス100%での純酸素燃焼。(右)アンモニア100%での純酸素燃焼。(出所:大陽日酸プレスリリースPDF)

2023年度は、引き続き実生産炉であるAGC横浜テクニカルセンターの建築用ガラス製造向けガラス溶解炉を用いて、さまざまな条件下でアンモニアを燃料とした技術検証が行われる予定だとする。また2024年度以降は、スケールアップしたバーナー試験や、AGC他拠点のガラス溶解炉での実証試験を計画しているといい、アンモニア燃焼技術の活用範囲を見極めた上で、2026年以降の本格導入を目指すという。さらに将来的には、ガラスのみならず、鉄鋼やアルミなどほかの素材への展開も検討し、広く素材産業の製造工程における温室効果ガスの排出量削減に貢献するとしている。