ワープスペースは6月21日、「WarpHub InterSat」と呼ばれる衛星間光通信ネットワークサービスを構成する衛星の初号機「LEIHO(霊峰)」の基本設計審査(PDR)を完了し、ビジネスを成立させられる設計になっていることが確認されたことを発表した。

  • 衛星初号機「LEIHO」のイメージ。

    衛星初号機「LEIHO」のイメージ。(出所:Webサイト共同プレスリリースPDF)

現在、SpaceXだけで4000機以上のスターリンク衛星を打ち上げており、今後さらに多くの衛星が打ち上げられ、軌道上の過密が進行していくと予想されている。2030年までに地球を周回する人工衛星の数は、4万基~5万基にも上るという推定もある。

そのような人工衛星の増加で危惧されているのが、電波の周波数帯域の枯渇だ。またセンサ機器の発展により、電波では高容量の通信ができないことが、宇宙開発のボトルネックになることも懸念されている。

これらの問題を解決するため、ワープスペースが低軌道を周回する人工衛星向けに展開を目指しているのが、光を用いた即応通信ネットワークサービスのWarpHub InterSatだ。同サービスの実現に向けて、まずは中継衛星3基を第1世代とした展開が目指されている。そして、その初号機として2025年の打ち上げが予定されているのが、今般PDRを完了したLEIHOだ。

PDRは、人工衛星の基本設計が製造や運用上の諸条件を満たしているかを審査するもので、衛星開発の過程では一般的に“第一関門”と見なされる。民間による人工衛星開発の場合では、多様な顧客ニーズやその収益性を念頭に設計を行うため、ビジネスが成立するかどうかも含めた重要な審査とされている。

衛星を高い軌道に投入すれば、それだけ地上局の可視時間は増えるが、通信を行う顧客の衛星との距離が開き、それだけ光通信端末の必要サイズや電力が大きくなってしまう。そこで、顧客を特定しその軌道を把握していく中でワープスペースは、中軌道の中でも比較的低い軌道である高度2000kmに衛星を投入することを目指し、LEIHOの設計についても調整が行われた。

PDRの完了には、概ね以下の要素が必要とされたという。

  1. 通信の高容量化・低遅延化や端末の小型化など顧客の要求を満たす最適なサービスであること
  2. 顧客に提供するための適切な機器や軌道の選定
  3. 競争力・安定性を維持するサプライチェーンおよび製造コストの最適化

今回のPDRは、として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で温室効果ガス観測衛星「いぶき(GOSAT)」の開発などに携わった元JAXA理事で、現在は同社ハンズオンアドバイザリーを務める浜崎敬氏や、日本の光通信実証プロジェクトの参画者、欧州宇宙機関(ESA)での開発経験を持つエンジニアなど、宇宙開発や光通信に関する知見や開発実績を持つ経験者が中心となったチームにより行われた。

これら専門家の視点により、設計の基礎条件である要素が満たされていることが確認され、事業性も担保されたことで、同社としてLEIHOの開発を次のフェーズへと進められるようになったとする。

今回のPDRに対し、ワープスペースの東宏充代表取締役CEOは、「今回、確かな開発経験を持つ専門家による厳しいPDRを経て、技術的な蓋然性だけでなく、収益性の観点からも事業として成立することが確認されました。光通信が世界的にも安全保障としての需要が高まる中で、サービスの有意性を今後もさまざまな角度から広く伝える必要があります。私たちは今後も市場のニーズに最適なサービスを迅速に実現できるよう全力で努めてまいります」とコメントを残している。

同社は今後も、急速に拡大する民間の宇宙開発の中で、顧客や市場ニーズへ最適なサービスを迅速に提供することを最優先に考え、引き続き開発に取り組んでいくとし、具体的には、より詳細な設計やシステムの検証・最終的な製造準備を進めるための詳細設計審査(CDR)に向けての開発を進めていくとしている。