インテルが、企業間の連携を高め、DcXを推進することで日本の次世代を育成することを目的としたプライベートカンファレンス「Intel Connection 2023」を6月19日-20日にかけて「技術とビジネスをつないで新しいことを始めよう」をテーマに開催している。

初日の基調講演は2件開催され、オープニング基調講演として「これから問われる真のトランスフォーメーションとは」と題し、衆議院議員で自由民主党(自民党)の副幹事長を務める小林史明氏とデジタルガレージ 取締役 共同創業者 チーフアーキテクトで、千葉工業大学変革センター センター長も務める伊藤穰一氏が登壇したほか、「名将と語る勝利の方程式“グローバル人材”と“テクノロジー”」と題し、2023 WBCで日本代表監督を務めた栗山英樹氏が登壇した。

AIの民主化に向けた取り組みを強化するIntel

オープニングスピーチに登壇したインテルの鈴木国正 代表取締役社長は、今回のイベントを「人と人、企業と企業、業種と業種、あるとあらゆるネットワーキングの場として活用してもらうために開催した」と説明。

  • オープニングスピーチに登壇したインテルの鈴木国正 代表取締役社長

    オープニングスピーチに登壇したインテルの鈴木国正 代表取締役社長

Intelとして「レジリエンスを備えたサプライチェーン」「進化するムーアの法則」「AIの『民主化』」の3つにフォーカスをしており、特にAIの民主化は、AIの性能向上と生成AIの普及を踏まえ、安心してAIを使える社会を構築するうえで不可欠なものであり、そのためには生成AIから、公平性・透明性・プライバシーを含め、それらが中心にある責任あるAIへと発展していく必要性を強調。すでにIntelとしてもディークフェイク動画を検出できる「FakeCatcher」を製品化し、すでに一部で活用が進められていることを説明。今後、AIの意思決定プロセスの不透明さを解決する技術や手法など、安心して使えるAIのさらなる発展に向けた取り組みを進めていくとした。

  • Intelの3つのフォーカス
  • Intelの3つのフォーカス
  • Intelの3つのフォーカス
  • Intelの3つのフォーカスとAIの民主化の方向性とそこで求められるAIの資質

日本が国を挙げて挑むトランスフォーメーション

基調講演のトップバッターとして登壇した衆議院議員の小林氏は、これまでデジタル副大臣や内閣府副大臣などを務めてきたことを踏まえ、日本政府ならびに国がどのように変わろうとしているのか、という視点での説明を行った。

  • 衆議院議員の小林史明氏

    基調講演と銘打つも対談形式でのやり取りも披露された。左からインテルの執行役員 経営戦略室長の大野誠氏、インテルの鈴木氏、衆議院議員の小林史明氏

デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)に代表されるトランスフォーメーションのためにはデジタル技術の活用が重要となるが、それは関係性を変えていくことにつながるという。「民間企業(NTTドコモ)にも務めており、サラリーマンの時に感じた規制のアンフェアをなんとかしたいと思って政治の世界に入った。一歩一歩、皆さんの要望を受けて改革を進めてきたが、従来のやり方だと改革を進めたいのに100年経っても進まない実情が浮き彫りになった。例えば、新型コロナウイルス感染症対策としてのワクチン接種の際にデータベースを作って思ったが、地方ごとにその仕組みが違っていた。原因を探っていったら、インフラが異なっていることが分かった。そこで、それを支える制度、ガバナンス、リソースが古いという仮説を立てるに至った。岸田内閣ではそうした状況を踏まえ、デジタル臨時行政調査会を立ち上げた」と、国が率先して変革していく姿を示し、国や政府としても現状を変えようとしていることを説明。同調査会ではアナログ規制の一括改正を進めているとする。「例えば、これまで目視確認が求められてきた作業があるが、今ならカメラやセンサを使って確認ができる。資格者が常駐する必要性や定期的な点検作業など、そういったものも含め今年と来年で約1万条項の法令や国の運用ルールの見直しを実施。これにより目視確認が必要だったものがセンサやカメラで代替できるようになるなど、デジタル化を推進することができるようになる」とし、2020年に取り組んだ押印の廃止に際しては48件の法律に押印の必要性が求められていたが、これが改正された結果として電子契約の市場規模が2年間で3倍に拡大。アナログ規制改革の対象である1万条項で同様のことが起こるインパクトは大きく、そのときに活躍することになるのが現場で生み出されたソリューションであるとする。

  • デジタル臨時行政調査会
  • デジタル臨時行政調査会
  • 国の制度・ガバナンス・リソースが古いという仮説を踏まえ、デジタル改革、規制改革、行政改革といった構造改革に係る横断的課題の一体的な検討や実行を推進することを目的としたデジタル臨時行政調査会が立ち上げられた

また、各省庁や中央と地方の自治体ごとに認可を受けていては手間がかかりすぎる点にも言及。テクノロジーマップとして整備し、それを規制所管省庁や企業などが利活用することで、類似の趣旨・目的の規制に係る類似の業務減少をはかったり、新事業の創出に寄与することを目指しており、すでに5つのソリューションで公募を行うことを予定しているとする。「ルールが変わらないと今まで諦めさせていたのは政府・国の責任。政府こそが先行してルールを変えていく。社会を変革していく。だから、ぜひ皆さんには、ルールは変えられる、自分たちの商習慣や組織だって変えられると思ってもらいたい」と小林氏は聴衆に語り掛け、国の形も変えていきたいとし、いままでバラバラだった国や自治体ごとのシステムの共通化を進め、国の用意したクラウドサービスの上にすべての自治体が紐づくことで、瞬時に全国のデータを集約し、新たな行政サービスにつながることを説明した。

  • テクノロジーマップの整備
  • テクノロジーマップの整備
  • テクノロジーマップの整備に伴って、技術検証を行う必要性があるものもあり、その第一弾の実施事業者の公募も行っていく

さらに、「これを日本のIT産業の構造転換にもつなげたい」とし、これまでの自治体ごとに1個1個システムを構築する必要性があったものから、アプリケーションレイヤだけを作れば、公共サービスをシステムとして提供することが大企業からスタートアップに至るまで門戸を開くことになるとするほか、民間で使っているソフトウェアとマイナンバーカードが提供するサービスを接続することで、シームレスに民間サービスと公的な手続きがつながるようになり、既存のソフトで税務申告などを今後数年以内にできるようにすることを目指しているとも説明した。

加えて、こうした仕組みができることで、この国の形を変えることができるようになり、全国の小さな声も政府が吸い上げ、政策判断に使えるようになるともし、「こういう国の姿に持っていければ、人口減少が進む中でも成長ができることが期待され、その実現には新しいソリューションの創出や、経済成長を作る企業の存在が重要になる」と語り、そのためのスタートアップ支援と人材流動化、その成功からの再投資に向けた取り組みを進めていくとするほか、2030年には上場企業への女性役員30%を求めているのに対し、自民党も10年以内に女性国会議員比率を30%に引き上げることを目指し、組織変革やサポートなどを行っていくことを強調。「私たちが変わっていくことを示すことで、みんなで変われるということを共有していきたい」とし、みんなでつながって、コラボレーションをしていくことで、共にこの国の景色を変えていきたいとしていた。

  • 第4世代Intel Xeon スケーラブルプロセッサのウェハ

    講演会場とは別にバートナー各社によるソリューションの展示エリアも設置。Intel自身もブースを出し、第4世代Intel Xeon スケーラブルプロセッサのウェハも展示していた