モリマシナリーは6月2日、岡山大学ならびに両備システムズと共同で、経済産業省(経産省)の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に採択された「熟練者の経験知からスマート工場化を実現する切削工具管理システム(AIツールソムリエ)」の開発成果発表会を実施し、その成果を公開した。

日本のものづくりを取り巻く課題として、「多品種少量生産への対応」「連続無人運転の実現」「スマート工場化」といった対応が求められている一方、熟練者が高齢化に伴う退職などで減少していくという問題も生じている。

多品種少量生産への対応のために、使用する切削工具の数や種類も増加傾向にあり、モリマシナリーでも取り扱い工具数の例として、10年前に比べて500本程度増加しているとするほか、同社製品で工具本数を200~300本収納可能な大容量工具マガジン「WINE RACK」の販売台数も増加傾向にあり、10年前から約2.5倍に増加しているという。

そうした増加傾向にある切削工具の管理において、必要な工具を迅速かつ確実に段取替えするには、高度な技能が必要であり、熟練者がその役割を担っていたが、高齢化が進む現在、その数も減少傾向にあり、練度不足による誤った工具選択による品質不良や、工具寿命の5~7割程度であっても廃棄されてしまうことによる生産コストも増加などが課題となっているという。

  • 日本のものづくり現場の課題

    日本のものづくり現場の課題 (提供:モリマシナリー/両備システムズ/岡山大学、以下すべて)

こうした生産現場における切削工具の寿命を最大化することを目指したのが今回の研究であり、モリマシナリーのマシニングツールマネジメントマシンで、200本以上の切削用工具を保管でき、工具情報の管理を簡素化するツール「TOOL SOMMELIER(ツールソムリエ)」をベース技術に、AI技術を活用し、切削工具の刃先状況などの欠陥を判断する手法を考案し、多品種・少量データにおいても工具摩耗を高精度に判定する「AI方式の高度化」を実現。これにより、欠陥検出において、目標値であった正答率85%以上を達成したとするほか、分散学習において、従来手法より高速(1/8)に学習できる手法を確立したとする。

また、多種多様な工具においても熟練者判断を実現する「最適工具選定システムの開発」として、摩耗予測において、目標値であった正答率70%以上を達成したともする。

さらに、熟練者ノウハウを伝承する「AIツールソムリエ実証機開発」に向け、工具の欠け・摩耗を高精度に可視化する撮像システム「TOOL COLLAGE(ツールコラージュ)」も2022年に開発したほか、最適工具選定システムとAIツールソムリエ実証機の融合に向けた実証機も完成させたという。

  • 「ツールソムリエ」と「ツールコラージュ

    切削工具管理システム「ツールソムリエ」と撮像システム「ツールコラージュ」の外観

なお、モリマシナリーでは、2024年度中にAIを搭載した仕様のツールソムリエの発売を計画しており、同年度の売り上げ1億円、2027年度には18億円の売り上げを目指すとしている。

  • AIツールソムリエの外観

    AIツールソムリエの外観

  • AIによる欠け・摩耗箇所の判断の様子

    モニター左の画像がAIによる欠け・摩耗箇所の判断の様子