近畿大学(近大)は5月31日、国内で最も多く生産されている食用豚である三元豚を、効果的に霜降りにする「アミノ酸比率法」を用いた飼養技術を改良し、汎用性の高い配合飼料での開発に成功したことを発表した。

  • (左)アミノ酸比率法で肥育した三元豚。(右)通常配合飼料で肥育した三元豚。

    (左)アミノ酸比率法で肥育した三元豚。(右)通常配合飼料で肥育した三元豚。写真提供:独立行政法人家畜改良センター(出所:NEWSCAST Webサイト)

同成果は、近大 生物理工学部 食品安全工学科の白木琢磨准教授らの研究チームによるもの。

2003年、近大 生物理工学部の入江正和教授(現・家畜改良センター理事長)らにより、廃棄パンを利用した「エコフィード」(主に食品工場から出る食品残渣を用いた飼料のこと)が食味の優れた霜降り豚肉を生み出すことが見出された。

その後、2015年~2017年に同大学の主導で行われた農林水産省の「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業」により、飼料に含まれるリジンの量と粗タンパク質量(CP)の配合比が、霜降り豚肉の作出に重要な要素であることが判明。その効果的な配合による飼養技術は、「アミノ酸比率法」と命名された。

今回の研究では、エコフィードの安定的な入手が困難であることから、飼料の安定性と試験の精度を高めるため、エコフィードよりも入手しやすい配合飼料を用い、より効果的なアミノ酸比率法が確立された。

そしてこの改良された飼養技術をもって飼育された三元豚は、ロースの粗脂肪(脂肪に加え、脂溶性のさまざまな成分も含む成分)が8%程度まで上昇し、見た目でもロースが霜降りになることが確かめられた。なお、通常配合飼料で肥育した三元豚のロースでは粗脂肪が4%程度で、霜降り豚肉と呼ばれる場合でも粗脂肪は6~7%程度だという。

研究チームは今回の成果をもとに、「豚肉における脂肪交雑向上のための使用技術のガイドライン~アミノ酸比率法の導入~」を作成し、日本全国の畜産関連団体に普及活動を行うとしている。なお、脂肪交雑とは霜降りの度合いのことで、12段階で評価されて等級が決定される。

そして2023年度中には、一般農家における大規模実証試験も予定しており、国産豚肉の高品質化による国際競争力アップに向けて、大きな前進となることが期待されるとしている。