京都大学(京大)は5月18日、原子レベルの薄膜形成技術を用いて作製した「タングステン/コバルト/プラチナ非対称人工超格子」が、これまでスピン流変換効率が高い元素として研究されてきたプラチナよりも3倍以上高い効率を持つことを見出したと発表した。
同成果は、京大 化学研究所の小野輝男教授、同・島川祐一教授、同・菅大介准教授、韓国・蔚山大学のキム・サンフン助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、物理・化学・医学・生命科学・工学などの基礎から応用までを扱う学際的なオープンアクセスジャーナル「ADVANCED SCIENCE」に掲載された。
次世代不揮発性メモリの一種であるMRAMは、ナノメートルサイズの磁石の向きを制御することで情報の書き込みを行っているが、現在主流のMRAM技術は電子のスピン角運動量の流れ(スピン流)によって書き込みを行う手法であり、そのエネルギー効率を高めるには、スピン流を効率的に生成する必要があるとされている。
そうした中、研究チームは今回の研究から、原子レベルの薄膜形成技術を用いて作製されたタングステン/コバルト/プラチナ非対称人工超格子が、スピン流変換効率が高い元素として知られるプラチナよりも3倍以上高い効率を持つことを確認したという。
超格子は、2つまたはそれ以上の種類の結晶の重ね合わせにより、その周期構造が基本単位格子より長くなった結晶のことであり、近年の薄膜作成技術の進歩により人工的に超格子を作成することができるようになってきており、今後、さらなる技術の進歩により、より高性能な超格子の形成なども期待される。研究チームでは、今回の成果を活用することでMRAMの省電力化が進むことが期待されるとしている。