中国半導体産業協会(CSIA)はじめ中国の多数の半導体関連業界団体が主催する「第25回中国集積回路製造年次大会およびサプライチェーン革新開発会議」が4月17~1日にかけて広東省広州市で開催された。

中国半導体サプライチェーンの強化策を様々な見地から議論するといったイベントで、スポンサーには、中国企業と並んで米国の3大半導体製造装置メーカー(Applied Materials(AMAT)、Lam Research、KLA)も名を連ね、自社の製造技術や装置に関する講演を行ったようである。米国政府が日本などを巻き込んで半導体関連の対中輸出規制を強化する中、米国企業は世界最大の市場である中国での商機を逃すまいと必死のようである。

IntelのPat Gelsinger CEOが4月10日週に訪中するなど、米国商務省の思惑とは別に米国企業にとって中国市場を失うことは死活問題であり、したたかなビジネス展開を行っているようである。もっとも、Seagateが、東南アジア製HDDを特定中国企業に出荷したとして米国商務省産業安全保障局輸出管理規則(EAR)違反の域外適用により、3億ドルの罰金が課されたことからも、細心の注意は必要である。もちろん、米国の主権が及ばないはずの日本もこの米国輸出管理規則の域外適用の対象になっている。

中国半導体製造サプライチェーン強化イベントの目的は?

このイベントは、世界の半導体産業の現状と中国の半導体産業の発展に焦点を当て、サプライチェーンの革新を通じて産業の上流と下流の連携強化について議論する目的で毎年開催されており、半導体および関連企業、政府や研究機関、業界団体などから1000人以上の専門家が参加。中国半導体製造における重要なブレークスルーを目指し、全体討議のほか、(1)IC製造エコシステム開発、(2)設計と製造協業、(3)パワーおよび化合物半導体開発、(4)集積回路の品質保証と改善、(5)自動車用チップ開発と応用、(6)スマートセンサ革新、(7)半導体材料革新、(8)装置および部材革新、(9)検査および検査アライアンス、(10)半導体投資・協力などについて個別の討議が行われた。

この会議の主催者である中国半導体産業協会(CSIA)は、2023年2月に「米国、オランダ、日本の政府は、中国のチップ製造に新たな装置の輸出規制と制限を課すことに合意した。この動きが現実になれば、世界の産業と経済に計り知れない損害を与えるとともに、中国の半導体産業に多大な損害を与え、世界中の最終消費者の利益に長期的な損害を与えることになる。当協会は、このような輸出規制の企てに反対する」と宣言するとともに、「グローバリゼーションの概念と世界の半導体産業の価値を守る外国企業のために、中国市場での健全な事業運営をサポートする」との声明を発表している。今回の大会は、この声明にのっとり、中国に有利なグローバルな半導体サプライチェーン構築を目指す狙いがあるようだ。

米国にとって最大の半導体および製造装置輸出国である中国に対する輸出規制の強化は、米国半導体関連企業の売上悪化に直結するため、企業の米国商務省に対する不満が募っている。そのため米国政府も日本やオランダにも追随を要請しており、ほかの同盟国・同志国にも共同歩調をとるように働きかけようとしているが、その一方、米国の産業界は、中国市場の足場を失わないように、様々な形で中国内での拡販に努めているようである。