東北大学発の宇宙スタートアップであるElevationSpaceは3月23日、同社が開発中の小型衛星を用いた宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」に搭載するハイブリッドスラスタの着火技術の技術実証に向けて研究開発を加速させるべく、宇宙航空研究開発機構(JAXA)および東北大学 学際科学フロンティア研究所と三者間共同研究契約を締結したことを発表した。

ElevationSpaceでは、2030年に国際宇宙ステーション(ISS)の運用が終了することを受け、ISSの日本実験棟「きぼう」に代替可能な宇宙実験施設として、ELS-Rの提供を目指している。同施設は鋭意開発中であり、2025年には技術実証機「ELS-R100」の打ち上げを予定している。

そのELS-Rの開発において重要な役割を占めているのが、同プラットフォームで利用される小型衛星を地球に帰還させるため、衛星軌道から離脱させることが可能な大推力を有したスラスタだ。そこで同社では、プラスチックなどの固体燃料と気体/液体の酸化剤を組み合わせて推進剤とする、ハイブリッド方式の小型スラスタの研究開発を進めている。

ハイブリッド方式の推進システムは、すでに打ち上げロケットでは一般的になっているが、小型衛星に搭載可能な小型サイズで、安全性があり、冗長性を有した着火システムは、世界的にもまだ実用化されていないという。そのためELS-Rの開発においても、当初から懸念材料となっていたとのことだ。

こうした小型着火システムの研究開発は国内外で活発化しており、先行研究の事例としては、「ガストーチ方式」や「アーク点火方式」などがあるという。

なお同社では、独自技術を備えたハイブリッドスラスタの試作機を開発済みで、燃焼試験もすでに複数回実施し、着火に成功済みだ。また、着火特性に対して再現性があることも確認できているとする。さらに、宇宙空間を模擬した真空環境下においても同様に着火および再現性の確認にも成功しており、高い信頼性を得ているとのことだ。

  • 着火確認試験の様子

    着火確認試験の様子(出所:ElevationSpace Webサイト)

また、今回締結された共同研究契約の目的は、小型ハイブリッドスラスタにおいて高い安全性を低コストで実現することであり、着火技術に関して3者共同による検討・実証を行い、その開発を加速させることだという。

なお現在は、宮城県内において、より実機に近い形態での燃焼試験を行える燃焼試験場を設置する計画を進めているとした。