千葉工業大学(千葉工大)は3月20日、2023年2月6日に千葉県夷隅郡御宿町の千葉工大 惑星探査研究センター 御宿ロケット実験場において、ハイブリッドロケットの推進剤を加圧する「電動ターボポンプ」を用いた地上燃焼試験を実施し、成功したことを発表した。

  • 電動ターボポンプを用いた燃焼試験の様子

    電動ターボポンプを用いた燃焼試験の様子(出所:千葉工大プレスリリースPDF)

同成果は、千葉工大 工学部 機械電子創成工学科の和田豊教授、同・佐藤宣夫教授、同・工学部 電気電子工学科の林真一郎助教、同・大学 惑星探査研究センターの庄山直芳客員研究員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、黒磯製作所(山口県下松市)、宇部興機(山口県宇部市)、やまぐち産業振興財団の共同研究チームによるもの。

宇宙産業は世界的に急成長しており、世界の市場規模は現在の約40兆円から、2040年には約120兆円~160兆円になるという試算もある。中でも人工衛星を使ったサービスの需要が大きく伸びており、それに伴い、日本においても小型衛星の打ち上げ需要が急増している。ところが現在、日本国内では衛星を打ち上げるためのロケットが不足しており、国内の小型衛星のほとんどが海外製のロケットによって打ち上げられている。現在の日本の宇宙開発においては、この打ち上げ能力不足が大きな課題となっている。

この課題を解決して日本の宇宙産業を一大産業にするため、千葉工大が研究開発を進めているのが、ロケットを気球で成層圏まで放球し、そこからロケットの空中発射を行う「ロックーン方式」での衛星軌道投入だ。同方式での高頻度・低価格での打ち上げを実現するべく、研究開発が進められていて、直近では2022年12月10日に、AstroXなどと共同で、山口県宇部市の宇部協立産業敷地内で打ち上げ試験を行い、空中発射を成功させている。

成層圏での空中発射が難しい要因として、地上から10km以上の高度での打ち上げとなるため、地上よりも気温が低いという点がある。低温のため、ハイブリッドロケットに搭載された液体推進剤の圧力が低下してしまうためだ。その解決に向けては、小型の電動ターボポンプを用いて推進剤を加圧することが必要となる。

今回の試験は、その第一歩として、電動ターボポンプによるハイブリッドロケットへの酸化剤(亜酸化窒素)供給の確認を目的とする地上燃焼実験が実施された。そして、タンクから供給された亜酸化窒素が昇圧されて燃焼室に供給され、高圧燃焼したことが確認されたという。研究チームは、電動ターボポンプを用いたロケットエンジン燃焼試験は国内初の事例であり、ハイブリッドロケットエンジンでは世界初となるとする。

  • (左)燃焼スタンドに設置された電動ターボポンプ。(右・上)ポンプ吸込口

    (左)燃焼スタンドに設置された電動ターボポンプ。(右・上)ポンプ吸込口(出所:千葉工大プレスリリースPDF)

なお今後は、今回の試験で得られた成果をもとに、ハイブリッドロケットエンジンの大型化および高圧化を図るとしている。

  • 燃焼試験後のシャフト

    燃焼試験後のシャフト(出所:千葉工大プレスリリースPDF)