アストロスケールは5月4日、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」(エルサディー)の捕獲用の「サービサー衛星」が、8つのスラスタのうち4つが故障している中、遠距離からの物体の観測および追跡、非制御物体への誘導接近(ランデブー)、絶対航法から相対航法への切替えなども含め、デブリを摸擬した「クライアント衛星」へのランデブーの実証に成功したと発表した。

  • 軌道上のELSA-dのイメージ

    軌道上のELSA-dのイメージ。左の大きな衛星が捕獲用のサービサー。右の小さな衛星がデブリを模したクライアント (c) Astroscale (出所:アストロスケール)

ELSA-dは、軌道から安全にデブリを除去するための捕獲機構を備えたサービサー(~175kg)と、デブリを模したクライアント(~17kg)で構成された衛星だ。サービサーにはランデブーシステムと磁力による捕獲機構が、そしてクライアントにはドッキングを可能にする磁性体のドッキングプレートが搭載されているのが特徴だ。

なおELSA-dはデブリ除去(デブリの捕獲)に関わる一連のコア技術の実証を目的とした世界初の商業ミッションであり、2021年3月にカザフスタンのバイコヌール基地より打ち上げられて以降、複数の実証を進めてきた。

両衛星は固定された状態で高度550kmの軌道に投入され、まず2021年8月25日に「試験捕獲」の実証に成功。磁石を活用した捕獲機構、搭載センサ、カメラなどが正常に機能することが確認された。

その後、「自律捕獲」の実証運用を2022年1月25日からスタート。サービサーからクライアントを分離後、サービサーに搭載のLPRセンサを駆使し、自律的な軌道維持アルゴリズムによってクライアントから30mの距離を7時間にわたって維持することに成功した。しかし、サービサーに異常が検出されたため、ミッションの安全のために異常を解決するまで捕獲の延期が決定された。

その後、いくつかの問題を調査できるよう、サービサーとクライアントの間に安全な距離が確保され、ゆっくりと離れ続けることにより最大約1700kmの距離が開いた時期もあったという。