日本の岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3月16日に首相官邸で会談し、日韓関係を正常な軌道に戻すことで同意した。
これに伴い、経済産業省は同日、日本が2019年に導入した韓国への半導体材料3品目の輸出管理の厳格化措置を緩和すると発表した。韓国政府も厳格化措置を受けて進めてきた世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続きを取り下げると決めた。日本政府は軍事転用の恐れが低いとされる製品を自由に輸出できる「グループA(旧ホワイト国)」の対象から韓国を除外しているが、ホワイト国への復帰についても今後「施策対話」で検討することを決めた。
こうした動きに対して、韓国国内の半導体および周辺業界では、大手企業を中心にサプライチェーンの不確実性解消と日本の素材・部品・装置・設備企業間の共同技術開発などが活発化することが期待されるとし、歓迎する動きが出ていると韓国メディアが報じているが、その一方で、韓国内の素材・部品・装置・設備を扱う中小企業からは、これまで韓国政府による国産化支援を受けて成長してきたが、今回の流れで韓国政府からの支援が縮小される可能性があり、競争力低下を憂慮しているとも伝えられている。
Samsungがソニーとの関係強化か?
Samsung Electronicsは、すでに日韓関係の改善に合わせてサプライチェーンの安定化を図ると同時に、車載半導体事業の拡大に向け、日本企業との協力を行うことを決めた。ソニーの吉田憲一郎会長はじめ経営陣は、3月15日にSamsungの最先端前工程ファブである平澤(ピョンテク)事業所およびディスプレイパネルの量産工場である牙山(アサン)のSamsung Display(かつてソニーとSamsungの合弁テレビ用パネル製造ラインがあった工場)を訪問し、車載用メモリやディスプレイ分野でコラボレーションの可能性を議論したものと見られると韓国メディアは伝えている。
日韓関係が回復すれば、韓国内半導体メーカーと日本の素材・部品・装置企業間の取引が再び円滑になり、いままで日本政府の輸出規制で日本からの輸入が激減したために成長した韓国内中小企業の競争力が弱まりかねないという見方も韓国内にはあるという。このように韓国政府の積極的な支援と韓国の大手企業と中小企業間の協力で達成した半導体素材や装置の国産化に対する熱意が低くなれば、ややもすると韓国内の半導体全体の成長が再び脅かされかねないとの見方があり、経済安保のために、韓国政府の積極的な中小企業支援継続を求める声が高まっているという。