新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は3月6日、馬渕工業所(仙台市)、東京大学生産技術研究所(東大生研)、宮城県産業技術総合センターの3者が、100℃以下の未利用廃熱を使った有機ランキンサイクル(ORC)発電システムを共同で技術開発したと公表した。この技術開発成果は、NEDOが実施した戦略的省エネルギー技術革新プログラムによって進められた成果である。

今回、馬渕工業所が開発したORC発電システムは、発電機のスクロール機構を高効率化し、80℃程度の低温排水でも作動する有機媒体利用の沸騰・膨張を受けて回転するスクロール方式の独自回転機構を用いて、4kW程度の発電を実現した成果になる(図1)。これを受けて、この発電成果をリチウムイオン電池などに蓄電し、発電量を有効活用できるシステムに仕上げることを目指している。

  • 馬渕工業所が開発したORC発電システム

    図1 馬渕工業所が開発したORC発電システム (NEDO発表資料から引用)

開発できたポイントは、スクロール方式の独自回転機構が1分当たり3600回転で約4.5kWの発電出力を発揮できる点になる。この発電効率が高いスクロール機構は、長年、高率的な熱利用を研究開発してきた東大生研の鹿園直毅教授の研究開発グループが実用化を支援したもの。また、この高効率スクール機構などの精密な加工精度と組み立て精度を確保するなどの技術指導を、宮城県産業技術総合センターが3次元精密測定法などによって、馬渕工業所の研究開発を支援した成果になる。

馬渕工業所が実用化した廃熱発電システムは、仙台市内の鈴木工業が所有するある産業廃棄物処理施設の焼却炉施設に組み込んで発電成果・発電量を確認した。この発電システムでは、発電した電気エネルギーをリチウムイオン2次電池に充電し、廃熱から電気エネルギーを回収するシステムになっている。興味深いのは、馬渕工業所内で実証した発電効率の実証試験では、排温水が80℃と高いので、4kW以上のエネルギーを回収できたものの、鈴木工業での実機での発電効率は実際の排温水が60℃とやや低いため1~1.5kW程度となった点である(表1)。

  • 鈴木工業が所有する産業廃棄物処理施設にある焼却炉施設に組み込んでORC発電システムの発電成果

    表1 鈴木工業が所有する産業廃棄物処理施設にある焼却炉施設に組み込んでORC発電システムの発電成果。馬渕工業所内での発電成果との比較 (NEDO発表資料から引用)

しかし、従来はこれまで利用できなかった100℃以下の温排水から発電でき、リチウムイオン2次電池に充電できれば、その分を蓄電し再利用可能になるところに、地域の廃熱利用システムとして意味がある。また、焼却炉に発電システムを組み込む技術も実際にはかなりのノウハウなどが必要となり、大きな技術開発テーマになる。

馬淵工業所は「今後は1機500万円程度で実用化・製品化し、これを事業化していきたい」と事業化展望を明らかにした。今後は、今回開発した廃熱発電システムを高度に生かす組み込みシステムなどが必要不可欠になる。これが実用化できると、各地にある100℃以下の廃熱利用という大きな熱資源が使える社会システムが手に入ることになり、大きな市場ができる可能性がある。現実の廃熱水は80から90℃ぐらいのものが大半を占めているからだ。