Samsung Electronicsが2月14日、子会社であるSamsung Display(SDI)から20兆ウォン(約2兆円)を借り入れた事実を公示したことが、半導体業界のみならず金融市場からも注目を集める事態となっていると複数の韓国メディアが報じている。SDIからの資金借入期間は2月17日から2025年8月16日までで、利率は年4.6%だという。

Samsungが子会社から多額の資金を借りるという緊急ともとれるカードをきったのは、2023年におけるSamsungの営業利益が大幅に低下し、2023年第1四半期には赤字転落が予想されるため、営業利益だけでは十分な投資財源を確保しにくく、社外から資金を確保しようとしたものとの見方が韓国の半導体業界関係者からは出ている。これまでもSamsungは、外部からの借入をせず巨額投資を進めてきており、海外から為替コストを負担して資金を取り寄せたり金融機関から借り入れを行うより、好調な子会社から借り入れるほうが有利と判断したと見られている。

SDIは、AppleのiPhone向けパネルの供給を拡大するなど中小型有機ELが好調なおかげで2022年の営業利益は前年比33.6%増の5兆9500億ウォンと過去最高水準となるなど、親会社よりはるかに好調な状況になってきている。

20203年のSamsungの設備投資額は従来通り50兆ウォン規模か?

韓国の半導体業界関係者の間では、Samsungの2023年の半導体投資額について、今回借り入れた20兆ウォンを含め最大50兆ウォン規模となるものとの予想がでている。Samsungの半導体部門を統括する慶桂顕(キョン・ゲヒョン)CEOが、社員へ説明会で「今年も例年通りの投資を果敢に続ける」と述べたという話もでてきている。ちなみに同社の2022年の設備投資総額は53兆1000億ウォンで、このうち90%の47兆9000億ウォンが半導体に投じられている。

具体的な同社の半導体投資先としては、韓国平澤(ピョンテク)キャンパス第3ラインおよび第4ラインのインフラ拡充と第5ライン建設、EUV露光装置の導入、米テキサス州テイラー工場の年内完工が主な目標として掲げられている。同社は、2022年に他社に先駆けてゲートオールアラウンド(GAA)構造を採用し、3nmプロセスへ適用したが、2025年には2nm、2027年には1.4nmプロセスでの量産開始を目指し、研究開発費も従来以上に増額し、競合するTSMCに対抗するとしている。