ENECHANGE(エネチェンジ)は2月9日、e-Mobility Power(eMP)と、日本の電気自動車(EV)用充電インフラの速やかな整備、EVならびにプラグインハイブリッド(PHV)ユーザーの利便性向上、持続的な設備投資とサービス提供の実現に向け、長期的に協調して取り組むことを目的とした業務提携契約を締結したことを発表した。

  • 業務提携を発表したe-Mobility Power(eMP)の四ツ柳尚子 代表取締役社長と、エネチェンジの城口洋平 代表取締役CEO

    業務提携を発表したe-Mobility Power(eMP)の四ツ柳尚子 代表取締役社長(左)と、エネチェンジの城口洋平 代表取締役CEO(右)

エネチェンジは、2021年11月より6kWの充電器の全国設置を進めており、専用アプリを介することで、それを利用できるようになる「EV充電エネチェンジ」というサービスを提供している。一方のeMPは、2019年に設立された後、2021年4月に日本充電サービスよりEV・PHV充電ネットワーク事業を継承し、自動車メーカー各社発行のEV・PHV充電カードで利用可能な充電ネットワーク構築を進めてきたほか、2021年6月にはジャパンチャージネットワークの全株式も取得し、ジャパンチャージネットワークが高速道路のサービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)やコンビニに設置している充電器も継承し、EVの充電プラットフォームの構築を進めてきた。

  • エネチェンジの6kW普通充電器

    エネチェンジの6kW普通充電器

今回の提携では、eMPの保有する各充電器利用のハブとなるネットワークの認証基盤システムに、エネチェンジの充電器を対応させることで、EVユーザーの利便性拡充を図ることが掲げられている。これまで、eMPでは、SAやPAなどといった移動途中で充電する経路充電がメインで、一方のエネチェンジは自宅や事業所などの拠点での基礎充電、および宿泊施設や商業施設、ゴルフ場といった目的地充電をメインとしており、今回の提携で、出発前、移動中、目的地到達後、と必要に応じた充電を、しかも従来の3kW普通充電器ではなく、倍速での充電が可能となる6kW普通充電を活用して行うことが可能となる。

  • 核となる充電器を利用することを可能とするハブ的な認証基盤システム

    eMPが事業の核としているのはさまざまなメーカーの充電器管理システムと、料金を徴収する充電サービス事業者の間に入って、ユーザーは規格にこだわらず1つのIDで、充電器を利用することを可能とするハブ的な認証基盤システム。今回の提携で、この認証基盤システムにエネチェンジの充電器がつながることとなる

  • EV充電の3つのパターン

    EV充電の3つのパターン。エネチェンジがフォーカスしているのが、家などでの基礎充電と、目的地に着いた後の目的地充電。eMPがこれまで注力してきたのが、SA/PAなどといった移動中の経路充電であり、今回の提携で相互補完が可能となる

使うのは既存の充電カード

この取り組みでは、エネチェンジの充電器を利用する場合であっても、EV充電エネチェンジのアプリをダウンロードして、登録して、といった必要はなく、自動車メーカーやeMPが従来から発行している充電カードを、エネチェンジの充電器のRFID部分にかざすだけで、ユーザーは新たな追加費用などは発生せずに充電を行うことができるようになる。

ただし、実際に全国各地に設置された充電器のRFID機能のアクティベート作業や、eMP対応を示すUI変更、設置施設の担当者などへの説明などが必要となるため、実際のサービスインは2023年4月以降を予定している。すでに、全国に1000台ほどが設置済みで、それらに対する改修作業が今後1か月ほどの間、進められていくこととなる。また、エネチェンジの充電器は、受注数としては累計で2500台を超えており、四半期ベースで1000台を超す受注を獲得できるようになってきたことから、2023年6月に3000台という目標のクリアが見えてきたとしており、「その先の2027年までに3万台という目標に向け、今回の提携が(設置台数増加の)追い風となる」とエネチェンジの城口洋平 代表取締役CEOは、今回の取り組みについて、充電器の普及拡大としての役割もあるとの認識を示す。

  • エネチェンジの充電器

    エネチェンジの充電器のRFID読み出し部分。eMP対応のマークを付与するなどの変更が必要になるため、その実作業の時間が1か月ほどかかる見通しだという(今回、披露されたデザインが完成系とは限らず、若干のデザイン変更などが行わる可能性があることに注意が必要とのこと)

eMPにとっても、同社は現在、急速充電器に注力しており、普通充電器は約1万2600口を有しているというが、いずれもパートナーが運営しているものであり、そこにエネチェンジが加わることで、事業の拡大が期待できるようになるとしているほか、「敷設されている普通充電器の多くが3kWであり、それをエネチェンジの6kWのモデルにアップグレードしませんか、という案内を行いやすくなる。また、急速充電器と普通充電器の両方を設置し、どちらがどれくらい使われるのか、といったいろいろなパターンの充電データを得られるようになり、日本のEV社会における充電の最適解を導き出せるようになる」(eMPの四ツ柳尚子 代表取締役社長)といった共同での取り組みによって生み出されるデータの活用も期待されるようになるともしており、「日本をベンチマークしてもらえるような充電インフラをエネチェンジと作っていきたい」(同)と今回の提携に対する期待を述べている。

  • 今回の提携により提供される2つの価値

    今回の提携により提供される2つの価値

また、会員データについては、カードの発行元(主に自動車メーカー)が有しており、eMPやエネチェンジが詳細な誰がどういった人物であるかといった部分には触れず、あくまでどのIDがどれくらい充電したか、というレベルに留まるが、今回の提携に伴い、急速充電と普通充電の利用バランスが把握できるようになるため、充電器設置の投資最適化を図ることも期待できるようになるともしている。

  • 提携の背景と、提携後の充電サービスにおける変更点
  • 提携の背景と、提携後の充電サービスにおける変更点
  • 提携の背景と、提携後の充電サービスにおける変更点。ちなみに、提携の具体的な話し合いについては2022年10月ころよりスタートし、とんとん拍子で話が進んで行ったという

なお、エネチェンジの充電器でも既存の充電カードで充電が可能になるため、エネチェンジが提供するEV充電エネチェンジのアプリの役割としては、充電料金の支払いがメインではなく、充電スポットの検索やその空き状況などを把握するために使用してもらうことがメインとなってくる模様である。