東北大学は1月23日、従来は光学的手法でしか検出できず、光を吸収する限られた材料でのみ利用されてきた「電子スピン波」を電気的に観測できる新たな原理を確立し、半導体を含むさまざまな材料において同波を観測するための基盤技術を構築することに成功したと発表した。

同成果は、東北大大学院 工学研究科の齋藤隆仁大学院生(研究当時)、同・工学研究科の好田誠教授(量子科学技術研究開発機構 量子機能創製研究センター グループリーダー兼任)らに加え、独・ピーター・グリュンベルグ研究所、ニュージーランド・ヴィクトリア大学の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物理とその関連分野を扱う学際的なオープンアクセスジャーナル「Physical Review Research」に掲載された。

インターネット上を行き交う情報量は増加し続けており、今後、第6世代移動通信やIoTなどが実現すれば、それらはさらに爆発的に増加することが予想されている。そのため、既存のデジタル回路の演算方式である逐次処理に比べて、膨大な情報の同時一括処理が可能となることから、並列処理が大きく期待されている。

現在検討されている並列演算を可能にする新たな情報担体の1つが、電子のスピンが回転しながら空間伝搬することで生まれる電子スピン波だ。同波は波の重ね合わせを利用できるため、デジタル信号処理が不得意な並列演算処理を省電力で実現できる可能性があるという。

  • 半導体中の電子スピン波の模式図。スピンが向きをそろえて一斉に回転する空間構造を持つ。スピン情報の精密制御および長時間保持の鍵となる特性を示すという

    半導体中の電子スピン波の模式図。スピンが向きをそろえて一斉に回転する空間構造を持つ。スピン情報の精密制御および長時間保持の鍵となる特性を示すという(出所:東北大プレスリリースPDF)

電子スピン波は理論上、半導体・原子層材料・酸化物などのさまざまな材料に存在することは理解されていた。しかし、電子スピン波の検出にはこれまで光学的手法しか存在せず、光を吸収できる材料が限られてしまうことが課題となり、材料開発のボトルネックとなっていたのである。

電子スピン波を用いた並列情報処理を実現するためには、さまざまな材料の電子スピン波を把握することが可能な、汎用性の高い観測手法の確立が必要不可欠となる。そこで研究チームは今回、半導体における同波の電気的な検出を試みることにしたとする。