キオクシアホールディングスと米Western Digitalの合併協議が、日米で重複上場する方向で調整が進められていると、米国の経済メディアであるBloombergが1月20日付けで報じている。
Western DigitalがNAND事業を切り出し、キオクシアと合併させる方向だという。Western Digitalが音頭を取る形で進めらているというが、最終決定にはまだ至っていないという。合併と言っているが、事実上、Western Digitalによるキオクシアの買収に限りなく近い動きのようである。両社ともこの件に関しては公のコメントを出していない。
Western Digitalは現在、キオクシアの株主ではないものの、キオクシアの主要製造棟群の製造装置の一部の所有権を有しており、この合併が実現すれば、会社(土地、建物、従業員など)の所有者と装置の所有者が異なるねじれ減少が解消されることになる。Western Digitalは、2017年にNANDの開発製造パートナーである東芝メモリ(現キオクシア)を買収する意向を示していたが、買収には至らなかった。その後、東芝メモリを買収したBain Capital主導のコンソーシアムと装置利用に関して合意し今日に至っている。
合併で世界トップシェアのNANDメーカーが誕生か?
NANDの売上高ランキングでは、Samsungが長年トップだが、キオクシアとWestern Digitalが合併すればその売り上げ規模はSamsungを超え、トップシェアの企業となる可能性がある(2022年第3四半期時点)。
ただし、キオクシアは2022年9月30日に、10月から主力2工場で生産するNANDを3割減産すると発表したほか、Western Digitalも、生産調整に加え、2023年8月期の設備投資額を前年度から3割以上減らすと発表している。その後、競合各社も減産を進めているようとされているが、もし今回の交渉が進み、合併が決まったとしても、その時点での生産規模次第では、売り上げにも変化が生じるため、確実に世界トップの企業になれるかどうかは現時点では不明である。
中国が合併を承認しない可能性も
もしキオクシアとWestern Digitalが合併で合意したとしても、中国をはじめとする各国規制当局の独占禁止法審査が待ち受けており、すんなりと合併できると言い切れるとは限らない。
特に、中国では、米国の対中半導体輸出規制の強化により、NAND専業のYMTCが米国のエンティティリストに載せられ、米国製半導体製造装置の入手が不可能になっただけではなく、装置立ち上げ中の米国籍エンジニアが米国に引き上げるなど、工場運営そのものが危機的な状況にある。このような状況下で、中国政府がキオクシアとWestern Digitalの合併を承認する可能性は高くはないと思われる。中国政府が、米国政府の対中半導体輸出制裁緩和を新会社承認と引替え条件として提示する可能性も考えられる。