具体的には、関節軟骨の質量分析やバイオインフォマティクス、遺伝子工学的手法を用いた研究により、加齢に伴うα-Klothoの発現低下が関節軟骨変性に寄与することを確認したという。さらに、加齢に伴うα-Klothoの発現低下は、細胞を取り巻く細胞外基質の物理特性の変化によってDNAメチル基転移酵素が多く動員され、α-Klothoプロモーターメチル化が促進された結果であることも解明したとする。これら一連の研究成果は、細胞外基質の物理特性やその機械的シグナル伝達、α-Klothoが軟骨治療の新規治療標的となる可能性を示すものとする。

なお、研究チームでは、この研究領域をさらに発展させて老化という世界的課題に立ち向かうためには、組織の硬さに由来する機械的シグナルがα-Klothoを中心とした老化関連因子をどのように制御しているのか、ゲノムワイドなシステムレベルでの俯瞰的理解が不可欠と考えているとしており、こうした課題を解決するため、飯島特任助教は世界で活躍できる研究者戦略育成事業採択事業の世界的課題を解決する知の「開拓者」育成事業(T-GEx)の中で、組織工学、ゲノミクス、システム生物学の手法を駆使し、変形性膝関節症をドライブするエピジェネティクス制御機構の全貌解明に挑戦する予定としている。

  • 加齢に伴う組織の硬さ増大

    加齢に伴う組織の硬さ増大は、長寿タンパクKlothoの遺伝子発現を抑制し、軟骨細胞の機能不全を引き起こすことが判明した (出所:名大プレスリリースPDF)