TSMCは2022年12月29日、「3nmプロセスを用いた量産開始および工場拡張式典」を台湾南部の台南サイエンス パーク(STSP)にある5/3nm製造拠点「Fab 18」のPhase8(第18工場第8製造棟)の建設現場で開催した。
式典には、台湾行政院の沈栄津 副院長、王美花 経済部長(日本の経済産業大臣に相当)はじめ台湾中央および地方政府関係者、台湾半導体工業会、主要大学や国立研究機関のメンバー、Applied Materials(AMAT)、ASML、Lam Research、東京エレクトロン(TEL)の製造装置トップ4社はじめ世界中の主要サプライヤ、建設パートナーらが参列した。
Fab 18 Phase8の棟上げ式で今後の受注確保見通しを示唆
TSMCは同日、3nmプロセス(N3)が良好な歩留まりで量産に成功したことを発表するとともに、Fab 18 Phase 8の棟上げ式典を開催した。すでにFab18のPhase 5~7でN3の量産を開始しており、同プロセスにより、量産開始5年以内に市場価値が1.5兆ドル相当のN3を採用した半導体が搭載された最終製品が生み出されると見積もっている。
TSMCは先端プロセスの大量生産を可能とする「GIGFAB」として機能させることで、競争優位性を確保してきたが、同社の劉徳音(Mark Liu)会長は「今日の式典は、TSMCが台湾で先進的な技術を開発し、台湾国内で生産能力を拡充するということを具体的な行動で表すものだ」と述べ、Fab 18 Phase8の拡張を誇示することで将来的な受注の確保について見通しが立っていることをアピールしたかったようだ。
Fab 18のPhase1からPhase 8までのそれぞれのクリーンルーム面積は5万8000平方メートルで、標準的なロジックファブの約2倍の規模ある。このFab 18への総投資額は1兆8600億ドルを超え、延べ2万3500人を超える建設業の雇用と1万1300人を超える直接雇用の機会が創出されるという。同社は今後、2025年に向けて順次、N3E(拡張版)、N3P(性能向上版)、N3X(HPC向け超高性能版)などのN3ファミリを増やしていく計画である。
また、5nm(N5)のウェハ価格は1万6000ドルだったが、N3のウェハ価格は2万ドルを超すと台湾の半導体業界筋では見ているほか、N3の生産量が2023年後半に増加すれば、2023年前半の減速を補い、通年で売上高が回復する見込みがあるとの見方も出ている。
新竹・台中で2nmの生産準備に進展
また同社は、台湾北部の同社本社近くの新竹サイエンスパークに、グローバルR&Dセンターが2023年第2四半期に正式オープンとなり、8000人のR&D要員が配置されることも発表した。さらに、新竹および台中サイエンスパーク両方に配置される予定の2nm(N2)ファブの準備を進めていることも明らかにした。
同社は、2025年末までに新たにGAA(Gate-All-Around)構造を採用して量産を始める計画で。劉会長は、台湾での最先端製造工程への投資を続ける姿勢を示し、台湾有事をめぐる議論を背景に、一部で出ていた「脱台湾化(台湾から他国への脱出)」や「最先端技術の海外流出」などの懸念を払しょくした。
現在、同社は熊本を含む合計6拠点が計画どおりに進行しているとするが、ドイツでのファブ建設の噂については言及しなかった。
ゼロエミッションに向けたグリーン製造
TSMCでは、グリーンな製造を通じて自然環境と共に繁栄することを目指しており、STSP内のTSMCのすべての建設は、台湾のEEWHおよび米国のLEEDグリーンビルディング認証基準にしたがっているとしているほか、TSMC STSP再生水プラントの水資源を使用して、2030年までに60%の再生水を使用するという同社の目標を達成するとしている。量産が開始されると、Fab 18は20%の再生可能エネルギーを使用することになるとしている。同社は2050年までに再生可能エネルギーの利用率100%とゼロエミッションの実現目標を掲げている。
なお、劉会長は、「私たちはサプライチェーンと共に成長し、設計から製造、パッケージングとテスト、製造装置、材料に至るまで将来の人材を育成して、世界に最も競争力のある高度なプロセス技術と信頼できる能力を提供し、世界に率先した技術革新を推進することを目指している」と述べている。