シャープ、シャープディスプレイテクノロジー(SDTC)、東京大学(東大)の3者は12月12日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において2019年度より取り組んできた「次世代高効率ディスプレイの材料およびプロセス開発」の成果として、Cdフリーの量子ドットを用いて、電流注入での発光とRGB(赤緑青)画素のパターニングに成功したことを発表した。

  • 開発されたCdフリー量子ドット発光素子のRGB画素

    今回開発されたCdフリー量子ドット発光素子のRGB画素 (出所:シャープWebサイト)

次世代ディスプレイ技術として期待される量子ドットだが、既存ディスプレイ技術と比べてさまざまなメリットがあるものの、一般的な量子ドットには材料としてRoHS指令などで規制されているCdを含むため、環境への影響などが懸念されている。

そうした背景から、3者はNEDOプログラムの一環として次世代の高効率ディスプレイ材料およびプロセス技術の開発を進めてきたという。

今回の研究では、Cdを含まない量子ドットをRGBすべてに適用し、パターニングした画素に対して電流注入で発光させることに成功したとするほか、従来に比べてB(青)のスペクトル幅を約60%狭くした量子ドットを採用することで、再現可能な色域の拡大を実現。これにより、発光した光のロスを招くカラーフィルターが不要となり、低消費電力なディスプレイを実現することが可能となるという。

また、今回の研究ではRGB画素のパターニングにフォトリソグラフィ方式を採用。これにより、高精細化や大面積化にも対応しやすくなるため、3者では今後、モバイル端末などの小型デバイスから、大型ディスプレイまでさまざまな用途への展開が期待できるようになるとしている。

  • 今回開発された青色量子ドットの発光スペクトルと色域

    今回開発された青色量子ドットの発光スペクトルと色域 (出所:シャープWebサイト)

なお、今回の成果を踏まえ東京大学では、量子ドットの高品質化に向けた基礎研究をさらに推進していくとする一方、シャープおよびSDTCでは、低消費電力と高輝度・高コントラスト、広い色域を兼ね備え、ヘッドマウントディスプレイをはじめとした中小型の高精細ディスプレイから8K/4K大型ディスプレイにまで対応する省エネルギーディスプレイの早期実用化に取り組むとしており、こうした省エネルギーディスプレイの普及による消費電力の低減を通じ、2030年の日本における省エネ効果量として11.3万kL(原油換算)を目指すとしている。

また、シャープと東大は、今回の成果の詳細について2022年12月16日に福岡国際会議場で開催される「第29回ディスプレイ国際ワークショップ(IDW'22)」で発表する予定としている。