東北大学、山梨大学、東北特殊鋼は12月2日、「逆磁歪効果」を示す厚さ0.2mmの「鉄-コバルト/ニッケル(Fe-Co/Ni)クラッド鋼板」の表面に、風邪コロナウイルス「HCoV-229E」捕捉タンパク質「CD13」を固相化させる技術の開発に成功したことを共同で発表した。
同成果は、東北大大学院 環境科学研究科(工学部材料科学総合学科)の成田史生教授、山梨大大学院 総合研究部の井上久美准教授、東北特殊鋼などの共同研究チームによるもの。詳細は、物理信号を変換するためのソリッドステートデバイスに関する全般を扱う学術誌「Sensors and Actuators A: Physical」に掲載された。
近年は、自然界に広く存在する未利用の運動エネルギーから電気エネルギーを回収する「環境発電」が注目を集めている。そこで研究チームは今回、曲げ振動によって電力を蓄えられる仕組みを有するセンサを作製することにしたとする。
まず振動発電を行うため、厚さ0.2mmのFe-Co/Niクラッド鋼板曲げ振動(共振周波数116Hz、加速度170m/sec2)が作製された。この鋼板では、約8.4Vの出力電圧が得られ、約0.414mWの出力電力(クラッド鋼板1cm3あたり約12.2mW)が確認された。
さらに蓄電回路に工夫が加えられた結果、曲げ振動によって蓄えられた電力を使用して情報を5分に1回送信することにも成功。その上、永久磁石によるバイアス磁場が印加されることで、振動発電量の大幅な増大を実現。蓄電量を減らさずに10秒に1回の送信が可能となったとした。
その上、周波数が変化すると、発電量が減少することで電波の送信間隔が長くなる結果も得られた。つまり、情報の受信間隔でクラッド鋼板の周波数変化(または発電量)を確認できるということになる。この周波数変化を利用すれば、同鋼板に作用する荷重の変化を検出することが可能だ。