北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)などは、微生物合成したピラジンアミン化合物「2,5-ジメチル-3,6-ビス(4-アミノベンジル)ピラジン」(DMBAP)が、リチウムイオン電池(LIB)の「LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極」の安定化に有効な添加剤であることを見出したと発表した。

同成果は、JAIST 物質化学フロンティア研究領域の松見紀佳教授、同・ラージャシェーカル・バダム元講師、同・アグマン・グプタ研究員、同・高森紀行大学院生、筑波大 生命環境系の高谷直樹教授、同・桝尾俊介助教、同・皆川一元大学院生らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

近年LIBにおいて、高電圧化に有効なLiNMC系正極(LiNixMnyCozO2;x+y+z=1)を活用するための研究が盛んに進められているが、同正極はやや不安定であるため、正極材料として安定化させるためには、添加剤を活用するなどのアプローチが必要だという。

JAISTの松見教授らの研究チームではこれまで、添加剤として「BIANODA」の合理的な設計法について報告済みだが、同添加剤の合成においては、材料の精製などがやや煩雑だったという。そこで今回の研究では、微生物合成によってDMBAPを合成し、LiNMC系正極用添加剤として検討することにしたとする。

BIANODAと同様にDMBAPもHOMO(最高被占軌道)が高く、重合性官能基を持つこと、正極活物質の劣化因子であるフッ化水素をトラップ可能な構造であること、遷移金属への配位子構造などを併せ持つなど、LiNMC系正極の安定化剤として理想的な構造を有しているという。この微生物合成を採用することにより、比較的複雑な構造を有する添加剤を簡易かつ低コストに、また低環境負荷な手法で合成することが可能になるとする。

また、筑波大の高谷教授らのグループでは、Pseudomonas fluorescens SBW25の遺伝子クラスターがDMBAPの微生物合成に有用であることを見出しており、さらにグルコースを原料としてDMBAPを発酵生産する組換え細菌も開発済みだった。

そこで今回の研究では、まずLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2/電解液(エチレンカーボネート(EC)/ジエチレンカーボネート(DEC)/ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6))/Li型ハーフセルにおいて、電解液に2mg/mlのDMBAPを添加し、正極安定化剤としての性能評価が実施された。