台湾行政院院会(閣議)は11月17日、「台湾版CHIPS法」とも呼ばれる半導体などの先端産業を支援する関連法の改正案を決定した。

半導体を中心とした成長産業を対象に法人税を優遇するもので、台湾政府経済部(日本の経済産業省に相当)によれば、早ければ2023年1月1日にも施行される見通しで、施行期間は2029年末までを予定しているという。法案は立法院(国会)に送られ、年内に審議を終了する見込みである。

閣議決定されたのは、産業創新条例第10条の2と第72条の改正案で、法案は技術革新かつ国際サプライチェーンにおいて重要な地位を占める企業を対象に、研究開発規模や売上高に対する研究開発費、有効税率が一定の規模・割合を満たしていることを条件に、先端技術研究費の25%に相当する金額(従来は15%)と、先端プロセスに用いる新規の機器や設備の購入費の5%に相当する金額(従来から継続)を当該年度の営利事業所得税(法人税)から控除するとしている。

機器や設備の購入費の上限は設けないが、控除総額の合計が当該年度に納めるべき法人税の50%を超えてはならないことが規定されているともしている。

閣議後の記者会見に出席した王美花経済部長(日本の経済産業相に相当)は、台湾のテクノロジー企業が前向きで革新的なプロジェクトに従事することを奨励するための税制優遇措置だが、台湾域内に投資する外国企業にも適用すると説明したと台湾中央通信社は伝えている。

この台湾版CHIPS法が施行されるのを見透かしていたかのように、ASMLやMicron Technologyが台湾での大規模投資を表明しており、今後、TSMCやUMC、MediaTek、ASEはじめ、多くの半導体関連企業の台湾域内での投資が活発化するとみられる。

  • 台湾の蔡英文総統に新工場建設を伝えるASMLのFrédéric Schneider-Maunoury最高執行責任者

    台湾の蔡英文総統に新工場建設を伝えるASMLのFrédéric Schneider-Maunoury最高執行責任者(COO) (出所:台湾総統府プレスリリース、2022年11月15日)

ASMLが台湾北部に新工場を建設へ、新たに2000人の雇用計画

ASMLのEVP兼最高執行責任者(COO)であるFrédéric Schneider-Maunoury氏は11月15日、台湾の総統府にて蔡英文総統と会談し、新工場の着工を2023年7月に開始する予定であることを伝えた。

ASMLにとって過去最大規模の投資になるという。建設地の新北市の市長の話では、新工場の場所は、同市林口区の再開発エリアで、第1期の投資額は300億NTドル以上、従業員は2000人規模になる見通しだという。台湾の業界関係者によると、ASMLは現在、新竹や台中市、台南市など5拠点を構え、台湾での一部製品の製造、露光装置販売、人材トレーニング、保守サービスの拡充を進めており、すでに従業員は全体で4500人以上を越えているという。

また、Micronは、広島で生産を開始した1β DRAMの製造を台湾の量産工場でも2023年に導入する予定だという。台湾での従業員は1万人ほどだが、生産能力拡充のため今後2〜3年で2000人増員する計画もあるという。

帝国データバンクによると(2022年7月)、台湾に進出している製造業は1224社で、その中で最も多いのが「半導体製造装置製造業」で38社、半導体向け超純水製造や薬液供給システムなど「化学機械・同装置製造業」、ウェハ検査装置やデバイステスタなど「電気計測機器製造業」もそれぞれ24社進出しているという。これらの日系企業にとっても台湾版CHIPS法は事業拡大のチャンスになるであろう。