大阪公立大学(大阪公大)、東北大学、日本原子力研究開発機構(原子力機構)、J-PARCセンター、高輝度光科学研究センター(JASRI)の5者は10月28日、結晶質固体「Ba1-xSrxAl2O4」の特定の原子振動が、構造量子臨界点付近の化学組成において乱れた状態で停止し、原子配列に部分的にずれが生じることで、結晶と非晶質両方の性質を併せ持つ状態になることを発見したと発表した。
同成果は、大阪公大大学院工学研究科の石井悠衣准教授、物質・材料研究機構の佐藤直大研究員、同・森孝雄グループリーダー、東北大 金属材料研究所の南部雄亮准教授、J-PARCセンターの河村聖子研究副主幹、同・村井直樹研究員、JASRIの尾原幸治主幹研究員、同・河口彰吾主幹研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物性物理とその関連分野全般を扱う学術誌「Physical Review B」に掲載された。
水が冷やされると氷になるような、同じ物質の性質が不連続に変化する現象を「相転移」という。相転移には、固体から固体に変化する場合も数多く存在する。そして結晶の化学組成などを適切に制御すると、絶対零度での相転移である「量子相転移」が起こることがある。これまで、磁気相転移が引き起こす量子臨界点については非常に多くの研究が行われてきたという。しかし、構造相転移の抑制によって現れる「構造」量子臨界点に焦点が当てられることは少なく、物質科学の未踏領域となっていたとする。
構造相転移の起源の1つに、「音響ソフトモード」とい原子の集団的な振動がある。通常、同モードの振動周波数(ω)が温度低下に伴って徐々に減少していき、ある有限温度でω=0となったとき、その原子振動パターンを反映した構造に構造相転移する。そこで研究チームは今回、充填トリジマイト型の酸化物強誘電体であるBaAl2O4が示す音響ソフトモードと、それが引き起こす構造相転移に注目することにしたという。