ダイセルは10月27日、半導体製造工程で多用されるフッ化水素酸(フッ酸)などのエッチング液から、半導体ウェハを保護する材料の開発に成功したことを発表した。

同成果は、米アリゾナ州フェニックスで10月17日から21日まで開催された半導体ウェットプロセスに関する国際学会「THE SURFACE PREPARATION AND CLEANING CONFERENCE(SPCC)2022」にて発表された。また、2022年12月14日~16日に東京ビッグサイトにて開催される「SEMICON Japan 2022」の同社ブースでの展示、および出展社セミナーでの紹介も行われる予定だという。

半導体製造プロセスには、さまざまな膜をフッ酸などのエッチング液に溶解させることで、目的の形状を作り上げる工程としてウェットエッチングがある。同工程で重要なのが、できるだけ短時間で溶かしたい膜だけを溶解させることであり、その溶かしたい膜と溶かしたくない膜の溶解速度の比は「選択比」と呼ばれ、できるだけ選択比を高くすることが微細加工技術の鍵といわれている。

エッチングの選択比の改良手法として、目的の場所に選択的に膜を形成する「領域選択的成膜(ASD)法」という手法が注目を集めているという。同手法により、溶かしたくない膜の上に選択的に保護膜を形成することで、エッチング液への溶解を抑制することが可能なためだが、同手法は、一般に高真空下で極めて高価なガスにウェハを暴露する必要があり、コストおよび生産性に課題があったという。

こうした背景のもと、同社はエッチング液に対する保護液剤として、独自開発した樹脂を含有する液剤を開発。同樹脂はシリコン窒化膜に対し強く吸着する作用を持つため、今回開発された保護液剤でウェハを処理することによりシリコン窒化膜上に選択的に保護膜が形成され、フッ酸への溶解を抑制する一方、シリコン酸化膜のエッチング速度には悪影響を与えないとした。この吸着力の強さから、同社は保護液剤に含有するオリジナル樹脂を「ナノひっつき虫」と命名したという。

同社の保護液剤は、生産性はそのままにエッチング選択比を向上させ、低コストでエッチングすることが可能となるとしているほか、半導体製造工場で使用されているエッチング液はそのまま使用できることも利点としている。

  • 現行法と今回開発された保護剤を用いた場合の比較

    現行法と今回開発された保護剤を用いた場合の比較 (出所:ダイセルプレスリリースPDF)