バイデン米大統領がニューヨーク州ハドソンバレーの中心地であるポキプシーにあるIBMのスーパーコンピュータや量子コンピュータなどの開発・製造拠点を10月6日(米国時間)に視察したのに際し、IBMは今後10年間にわたってハドソンバレー地域全体で200億ドルを投資する計画を発表した。ハドソンバレーは、ニューヨーク州を流れるハドソン川沿いの地域、特に北の州都アルバニー市から南のニューヨーク市にかけての一帯を指しており、盛んな産業開発の代名詞となっている地域として知られている。

IBMにとってニューヨーク州は、1941年以降の伝統的な事務機器(ビジネスマシン)やコンピュータの研究開発および製造の本拠地であり、かつては半導体工場(2015年にGlobalFoundriesに譲渡後、一部はonsemiに転売された)も存在したが、今は半導体研究開発の拠点のみ残る状態である。中でもアルバニーには、世界初の2nmプロセスによるロジックデバイス開発に成功した半導体研究開発センターがあり、現在1nmロジックプロセスの開発が進められている。また、ポキプシーはメインフレームの拠点として知られるほか、近年では量子コンピューティングに関する拠点となっている。

IBMは今回の200億ドルの投資について、半導体、メインフレーム、ハイブリッドクラウド、AI、および量子コンピューテイングの研究開発および製造に投資するとしている。ニューヨーク州との緊密な協力によって、ニューヨークの活気に満ちたテクノロジーエコシステムを拡大し、多数の雇用を創出することが投資の目的だとしている。

なお、同社では、半導体技術の未来は、ヨークタウンハイツ(中核となる先端技術研究施設)からアルバニー(300mm開発・試作拠点)、そしてその先にあるハドソンバレー(半導体を応用したメインフレームや量子コンピュータ開発・製造拠点)で生み出されるとしている。特にアルバニーでの次世代半導体開発の産官学共同イノベーションモデルは、米国半導体産業強化のためのCHIPS法に基づき設置される国立半導体研究機関であるNational Semiconductor Technology Center(NSTC)の基盤となる可能性があるとされている。