10月1日は、国際コーヒー機関(ICO)が定める「国際コーヒーの日」。温かくおいしいコーヒーを楽しめる本格的な秋冬シーズンの始まりの日でもあり、コーヒー生産者にとっては新年度のスタートと言える。
世界中で愛されるコーヒーだが、約30年後には高品質コーヒーの代表格であるアラビカ豆の供給が現在の半分以下になるかもしれないという課題が浮上してきている。おいしいコーヒーを守るため、生産者にできることはあるのか、そして衛星リモートセンシングはコーヒー栽培の現場で何ができるのか? 世界でも例がないという衛星データを活用したコーヒー営農支援の取り組みで、UCC上島珈琲と空間情報技術のリーディングカンパニーである国際航業がタッグを組んでいる。
コロナ禍で顕在化した遠隔生産管理の難しさ
2021年、内閣府の「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」に「衛星画像によるコーヒー農園の営農支援と気候変動緩和ポテンシャルの評価」が採択された。世界各国にコーヒー農園を持つUCC上島珈琲が、遠隔地からコーヒー栽培現場の情報を把握することができる衛星リモートセンシング技術の利用に乗り出したのだ。
そのきっかけは、新型コロナウイルス感染症の流行により海外渡航が大きく制限され、海外のコーヒー農園での生産管理が難しくなったことにあった。
「衛星データを利用しようと思った直接のきっかけはコロナ禍ですね。コーヒーの栽培地は世界各地に点在していて、私たちUCC上島珈琲の農園管理部門である『農事調査室』は、多い年ですと年間で6ヶ月は海外にいることもあります。なかなか渡航が難しいアフリカや中米の空港から遠い農村にも足を運び、ときにはバスで標高4000m級の山を越えて行くような、1日では到着できない場所に行くこともあります。しかしコロナ禍で渡航が制限されて、調査が非常に難しくなってしまいました」(UCC上島珈琲農事調査室 日比真仁さん)
国際航業の提案を受け衛星データ活用の検討を開始
そんなときに浮上したのが、1970年代からリモートセンシングに取り組む企業で、UCC上島珈琲が2019年から協力関係を模索していた国際航業からの提案だった。もともとコーヒー業界には、長期的にコーヒーの需要が高まっているにもかかわらず、気候変動の影響で供給が減っていくという課題があった。環境激変が予測されるコーヒーの世界で、衛星データは持続的な生産を支援するツールとして期待されていた。
「『2050年問題』というコーヒー業界に共通する課題があります。今から30年後には、気候変動の影響でコーヒーの栽培環境が変わって、アラビカ豆の栽培適地が50%まで減ってしまうと言われています。しかも供給が減るだけでなく、世界の人口は2倍になり需要は増加していきます。途上国の多いコーヒー生産国にとっては、コーヒー栽培が難しくなることは貧困問題にもつながりかねないため、大きな課題です。そんな中で、2019年に国際航業さんから、衛星データをコーヒー営農支援に利用しないかというお声がけがありました。私たちもそれまでは衛星データで何ができるか知らなかったのですが、お話をうかがってみて、コーヒー栽培の持続可能性を客観的に評価できる仕組み作りにつながるのではないかと思っていました」(UCC上島珈琲 日比さん)
「私たち国際航業は、森林の植生や農作物など地球環境問題を宇宙の視点から調べるサービスを展開しています。コーヒーの木そのものの解析は初めてなのですが、2019年に代表電話へご連絡するアプローチから始まって、担当の方につながることができました。UCC神戸の本社を訪問して、『世界的にもやったことがありませんが、一緒に取り組んでみませんか』とご提案しました」 (国際航業 LBSセンシング事業部 尾國資朗さん)