東北大学は9月30日、ルテニウム酸化物(RuO2)の反強磁性磁気秩序によって生成されるまったく新しいスピン流生成現象を発見し、さらにそれを応用することで、外部磁場をまったく必要としない垂直磁化反転を実証したことを発表した。

同成果は、東北大大学院 工学研究科の輕部修太郎助教、同・田中貴大大学院生、同・好田誠教授、同・新田淳作名誉教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

「スピンホール効果」により、スピン流は一般的に、量子相対論的効果の一種であるスピン軌道相互作用によって、白金やタングステンといった重金属中に電流を流すだけで生成することが可能とされている。

スピン流は磁気の流れであることから、磁性体中の磁化に有限なトルクを与えることが可能であり、スピン流を活用することで垂直磁化膜の磁化反転がすでに実証されている。これは情報担体の情報の書き換え動作に相当することから、磁気デバイスへの応用研究が進められている。

一方、従来のスピンホール効果で生成されるスピン流は印加電流方向によってスピン偏極方向が決まるため、磁化を駆動するトルクは発生するものの、弱い面内磁場のアシストがないと磁化反転を誘起することができなかった。スピン流でも磁化反転ができるようになった点は大きな進歩だったが、結局そのために外部磁場の助けが必要になってしまうというジレンマがあったという。

そこで研究チームは今回、RuO2に注目することにしたという。そしてスピン流については、RuO2中の反強磁性磁気秩序と、そのルチル結晶構造由来の結晶場によって形成される「スピンスプリットバンド構造」によって生成され得ること(スピンスプリッター効果)が理論的に予想されていたとする。