千葉工業大学(千葉工大)は9月26日、「はやぶさ2ミッション初期分析チーム」のうちの「石の物質分析チーム」の研究成果の一環として、小惑星リュウグウの表層から持ち帰られた粒子の「強度」計測を担当し、カミソリで切り取れるほど柔らかいことを確認したほか、リュウグウ母天体が破壊された衝突のときに発生する温度と圧力を数値衝突計算で解明するのに貢献したとの発表を行った。

同成果は、千葉工大 惑星探査研究センターの黒澤耕介上席研究員、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所(ISAS) 太陽系科学研究系の田中智教授が率いる物性計測サブチーム、東京工業大学(東工大)の玄田英典教授が率いるシミュレーションサブチームなどの共同研究チームによるもの。詳細は、石の物質分析チームで1つの論文として、米科学雑誌「Science」に掲載された。

石の物質分析チームは、6チームある初期分析チームのうちの1つで、さらに複数のサブチームに分かれている。そして、それぞれの研究者や機関が得意とする手法や技術を駆使して、粒子を構成する元素組成、熱物性的特徴、機械特性、電気特性、磁気特性などの分析が行われた。強度も岩石の基本的かつ重要な物性の1つであり、詳細な計測が行われた。

岩石の強度は、その生成環境によって変化することが知られている。しかし、そのためには精製環境に関する情報が必要となるものの、リュウグウの場合、どのように形成され、そしてどのように進化してきたかを解明するのが石の物質分析チームの目的であり、当然ながら強度に関連する情報は乏しい状態であったことから、確実に強度を計測することができる「3点曲げ試験法」を採用することにしたという。

同試験は、試料を2本の支持棒で支え、その中心を1本の押し棒で押すという内容で、押し棒の変位と荷重の関係を調べるもの。押し棒の変位が大きくなると試料がたわんで曲げ応力が発生し、試料が破断した時点の応力がその試料の強度となる。研究では、確実に計測する必要があったことから、試料を長方形に加工しさえすれば計測できる堅実さが決め手となり、今回の試験法として採用されたとする。また、試料の大きさに合わせた治具は、千葉工大の工作センターにて製作された。

試験の結果、粒子の強度は地球上の岩石に当てはめると、比較的もろい大理石のそれに近く、火成岩に比べて数分の1程度であることが確認されたという。

  • リュウグウ粒子の強度計測の様子

    リュウグウ粒子の強度計測の様子。試験はJAXA 宇宙科学研究所(ISAS)で実施された。粒子は数mmと小さいため、専用の治具が設計・製作された (出所:千葉工大プレスリリースPDF)