東京工業大学(東工大)は9月14日、正孔輸送材料の性能を向上させる等原子価の不純物を用いた正孔ドーピング法を新たに開発したことを発表した。

同成果は、東工大 元素戦略研究センターの松崎功佑特任助教(現・産業総合技術研究所 主任研究員)、同・細野秀雄栄誉教授、同・大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の熊谷悠准教授(現・東工大特定教授、東北大学教授兼任)、同・大場史康教授、同・角田直樹大学院生、米・カリフォルニア大学サンディエゴ校の野村研二准教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する機関学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

次世代太陽電池として期待されているペロブスカイト型太陽電池だが、その実用化にはいくつかの課題が残されており、その1つが光で生成した正孔を電極まで運ぶ正孔輸送層(p型半導体)の新規開発であり、低温で作製可能かつ優れた正孔輸送能を持つ、p型無機半導体の開発が求められているという。

そこで研究チームは今回、化学的に安定で、溶液法で比較的容易に薄膜形成が可能なワイドギャップp型無機半導体のヨウ化銅(CuI)に着目することにしたという。しかし純粋なCuIは、体積1cm3あたりの正孔濃度が1014~1016と低く、正孔輸送特性の向上には、より高濃度で制御できる不純物を使った正孔ドーピングの開発が必要とされていた。

問題視されたのは、CuIは一価の銅イオンで構成されている点で、従来の正孔ドーピング法では、構成カチオンよりも原子価の低いイオンで置換することで行われており、ゼロ価のイオンが定義上存在しないことから、CuIの正孔ドーピングは不可能と考えられてきたという。

そこで研究チームは、銅一価半導体である酸化銅(Cu2O)やCIGSの正孔ドーピングに経験的に使われてきたアルカリ不純物効果に着目。正孔生成のメカニズム解明による新たなキャリアドーピング設計の提案と、CuIの正孔ドーピング技術の開発を目指すことにしたという。