バイデン政権が10月にも米国半導体メーカー製の人工知能(AI)チップや、その製造に使われる米国製の半導体製装置の中国への出荷制限を拡大する計画を立てているとの情報を、複数の関係者からの証言としてロイターが報じている

それによると米商務省は、先ごろ、米国の大手半導体製造装置メーカー3社(Applied Materials、Lam Research、KLA)に対して14nmプロセス以下の半導体デバイス製造に必要な製造装置の輸出を事実上禁止する(正確には個別に商務省のライセンスを必要とするが原則許可を出さない)旨の書簡を送っていたが、これを輸出管理規則として明文化し、すべての米国企業に適用する予定であるという。

また商務省は同様に、NVIDIAとAMDに対して特定の先端AIチップを中国に輸出することを事実上禁止する書簡を送ったとされるが、この書簡内容も規則として明文化し、すべての米国企業に適用する予定だともしている。

これまで商務省は時間のかかる輸出管理規則作成プロセスを回避し、管理を迅速に実施できる書簡を特定企業に送付し、輸出規制を行ってきたが、この場合、書簡を受け取った企業にのみ規制が適用され、すべての企業に適用されるわけではなかった。これを公式な規則とすることで、その適用範囲は拡大され、同様の技術開発を行っている他の米国企業もあまねく制限を受けることになる。

また別の情報として、この規則は、対象となるチップを含む最終製品の中国への出荷にもライセンス要件を課す可能性があるという話もでているとのことで、NVIDIAのA100チップを搭載したDellやHPのデータセンタサーバなども規制対象になる可能性があるとしている。規則には、さまざまな規制項目を追加することが検討されているとのことで、そうした理由から規則の発表・実施が遅れる可能性もあるという。

なお、米当局は、対中輸出規制の効果を最大化することを目的に、日本を含む同盟各国の政府にも働きかけを行っている模様で、日本などの米国外の企業に対しても当該半導体や製造装置に対する中国への出荷禁止に向けた働きかけを行っているともされており、こうした中国への輸出規制強化の取り組みについて、11月に控えた中間選挙に対するバイデン政権の国民に対するアピールの一環とみる向きもあるようである。