中国四川省における60年ぶりの猛暑と干ばつの影響で、深刻な電力不足が発生し、四川省地方政府は8月15日から20日までの間、省内のほぼ全域の工場での生産停止を要請する通達を出したが、20日にはこの措置を25日まで延長した。

このため、IntelやTexas Instruments(TI)、onsemiの後工程工場はじめすべての工場は11日間にわたって生産を停止せざるを得ない状況にあるが、さらなる工場の操業停止延長要請が出される可能性があるという。トヨタ自動車はじめ多くの日系企業も操業停止に追い込まれているほか、Apple製品を組み立てるFoxconnの工場も操業を停止しているという。

四川省政府は、一般家庭に最小限の電力を供給することを優先にしている。当初は、生活に欠かせない商業施設の電力供給も優先するとしていたが、18日からは商業施設にも徹底した節電を求め、通常の7割以上の節電を要求、協力しない店舗は電力供給を停止する処分を行っているという。

半導体関係は、いわゆるエッセンシャルワークに認定され、2020年の武漢における新型コロナウイルス対策として都市封鎖が生じた際にも、同地でNAND製造を行っているYMTCは、中国政府の意向で稼働を継続していた。しかし、今回は、肝心の電力が不足してしまっているため、工場の稼働ができない状態となっている。

四川省はもともと、電力供給用発電源の約85%を水力発電に依存しており、石炭や石油による火力発電施設は比較的少なく、中央政府の徹底した脱炭素化方針で、火力発電の稼働も厳しく規制されている。今夏は降雨量が少なく、ダム貯水量が底をついており、水力発電は深刻な状況だという。同省は代替電源をほとんど持っていなかったことが今回の事態を招いたといえる。

そのため、同省は、新エネルギー開発拠点を整備し、蓄電設備の設置や風力・太陽光といった再生可能エネルギーの設置を加速させることを決めたというが、今回の電力不足の事態解決には間に合わない。四川省は、ポリシリコンやリチウムの主要生産地だが、工場の操業停止でポリシリコンだけではなく、電子部品向け素材の価格が急騰する気配があるという。

半導体産業は近年、米中デカップリング(政治)、インフレ(経済)、新型コロナウィルス(医療)、ロシアのウクライナ侵攻(戦争)、などさまざまな影響を受けるようになってきてきたが、今回、それに天候異変や自然災害が加わり、多数の予期せぬ事態の連続発生で将来を予測することがますます困難になってきている。