順天堂大学は8月17日、新規非侵襲刺激法である超音波刺激を用いて、脳深部に位置する「大脳基底核」の「被殻」が不適切な行動の抑制に関わっていることを示し、前頭葉-被殻という新たな脳の情報処理回路を発見したと発表した。

同成果は、順天堂大大学院 医学研究科 神経生理学の中嶋香児 特別研究学生(東京大学大学院 医学系研究科大学院生)、同・長田貴宏准教授、同・小西清貴教授、東大大学院 医学系研究科 整形外科学の田中栄教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、ライフサイエンス全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Cell Reports」に掲載された。

そのまま続けるとケガにつながるなど、不適切な行動を抑える能力は「反応抑制機能」と呼ばれており、この機能は、前頭葉を中心に複数の大脳皮質の部位が関わることがこれまでの研究からわかっている。また、脳外科患者での埋め込み電極による脳深部刺激療法などから、大脳基底核の「視床下核」も反応抑制に関わることなどが明らかにされている。

一方、ヒトでの脳イメージング研究から大脳基底核のほかの部位である被殻も反応抑制への関与が示唆されていた。しかし、反応抑制に必要不可欠なのか、またどのような神経回路によって反応抑制が生み出されるのかは不明であったことから、研究チームは今回、新規非侵襲的脳刺激法である超音波刺激法を用いて情報処理の仕組みを調べることにしたという。

具体的な実験方法として、健常被験者の反応抑制機能を調べるための「ストップシグナル課題」が採用された。左向きまたは右向きの矢印が画面に出た際、被験者には矢印と同じ側のボタンをできるだけ早く押してもらうゴー試行と、ある一定の割合で、左右の矢印が出た直後に上向きの矢印に変わるストップ試行を設定し、そのときはボタンを押さないというルールとなっている。