沖縄科学技術大学院大学(OIST)は8月10日、眼球が正常に発達せず、野生のものよりかなり小さいゼブラフィッシュの突然変異体を用いた研究を行い、細胞死を防ぐタンパク質の役割を明らかにしたと発表した。

同成果は、OIST 神経発生ユニットのスワティ・バブ大学院生(研究当時)、同・竹内悠記博士、同・政井一郎教授らの研究チームによるもの。詳細は、生物学と医学全般を扱うオープンアクセスジャーナル「eLife」に掲載された。

細胞のDNAが損傷すると、細胞増殖のために必要なDNAの複製が、損傷した箇所で停止してしまうことになるが、細胞は多くの損傷を修復するタンパク質を活性化し、さまざまな方法でDNAの修復を試みるという動きをみせる。しかし、いずれの方法でも修復がうまくいかなかった場合、その細胞は死んでしまうことになる。

腫瘍が発生する細胞の多くでは、損傷を修復するタンパク質に問題があるといわれている。また、このタンパク質は細胞周期を制御してDNA修復を助けるため、重要なタンパク質であると以前から考えられていたが、厳密な検証はされていなかったという。

そうした重要なタンパク質と考えられる「BANP」は、腫瘍の抑制や細胞周期の制御に関与していると以前から考えられてきたものの、この遺伝子をマウスなどのモデル生物で欠失させると、胚が死んでしまうため、これまでの研究はすべて、細胞を胚体外で人工的に増やす細胞培養で行われてきたという。

そこで研究チームは今回、このような可能性の検証に、ゼブラフィッシュの胚を使用することにしたという。その理由は、ゼブラフィッシュの胚は母体の外で成長するため、理想的なモデル生物となりえると考えられたからだという。