BANPが細胞周期の制御に果たす役割について調べるため、まず変異体のBANP遺伝子の塩基配列が調査された。BANPタンパク質をコードする遺伝子は25番染色体に存在しているが、調査の結果、その遺伝子上に明確な変異が発見されたとする。

また、この変異を持たない、発育中のゼブラフィッシュのBANP遺伝子に別の変異を起こさせたところ、その個体の眼球も正常に発生しなかったという。このことから、BANPはDNAの修復に重要な役割を担っているという可能性が示されたという。

研究チームでは、こうした結果に対し、BANPがどのような働きをし、その欠損が生物の発生にどのような影響を与えるのかという疑問が浮かび上がってきたという。最近になって、BANPがDNAからRNAを転写する機能を持つ重要なタンパク質であるという研究成果が発表されたことから、それを受けてゼブラフィッシュの突然変異体と野生型ゼブラフィッシュの遺伝子発現の比較を実施することにしたとする。

その結果、BANPは31の遺伝子発現を促進し、直接的・間接的に細胞増殖に多彩な影響を及ぼすことが判明。そして、細胞増殖におけるさまざまなDNA修復メカニズムが調べられたところ、各メカニズムにはBANPが産生するタンパク質が必要であることも判明したほか、BANP突然変異体では、それらのタンパク質の産生量が低下していることも確認されたという。これは、BANPが正常に機能しなければ、DNAの修復が行われないということを示すものだという。

  • 受精後4日目の野生型ゼブラフィッシュの胚

    (上)受精後4日目の野生型ゼブラフィッシュの胚。(下)同じく受精後4日目のBANP欠損型ゼブラフィッシュの胚。BANP欠損型は野生型に比べ目が小さい(赤矢頭)。中脳の最上部である視蓋に濁りがみられ、細胞死を意味しているという(黒矢頭)。この画像は、eLifeに掲載された論文内の画像 (出所:OIST Webサイト)

研究チームでは、こうした結果から、BANPは複数の制御機能を持つことが推測され、DNA修復から細胞の複製、腫瘍の抑制まで、さまざまなタンパク質に影響を与えることが考えられるとしているほか、BANP遺伝子の変異は、細胞死に関連しているともしており、今回の研究成果をきっかけに、がんや細胞周期の制御との関連について研究がさらに進むことを期待しているとコメントしている。