京都大学(京大)と英弘精機は8月8日、深紫外波長のレーザー光を用いて気温の高度分布を計測する、ラマンライダー用の迷光の少ない「多波長分光検出器」を共同開発し、これまでに開発した「深紫外水蒸気ラマンライダー」を組み合わせることで、上空の気温と水蒸気量を常時安定して同時計測できる機器を開発することに成功したと発表した。

同成果は、京大 生存圏研究所の矢吹正教特任准教授、英弘精機の共同研究チームによるもの。

線上降水帯の発生などによる激甚化する豪雨災害に対応するため、両者が2014年より共同開発してきたのが、上空の気温と水蒸気量の分布状態をリモートセンシング手法により、地上から計測するラマンライダーである。

ラマンライダーでは、レーダーなどでは検出が難しい水蒸気量の高度分布が得られるため、大雨をもたらす雲の発生をより早期に予測できることが期待されている。両者が先行して完成させた水蒸気ラマンライダーに関しては、2017~2018年に森林域で、2019年以降は都市域で実証観測が実施されており、現在は製品化に向けた取り組みが行われているという。

気温ラマンライダーの気温推定の仕組みは、空気分子の回転ラマン散乱光のスペクトル形状が気温によって異なるという性質を用いる。従来方法は、干渉フィルターを用いて2波長のみの散乱光強度を計測することにより、スペクトル形状の一部の変化を捉えるものだったとする。波長精度の高い干渉フィルターと周波数安定化のため、制御装置が付いたレーザーが必要であり、また光入射角などの光学系の高度な調整が必要である点が課題だったという。

それを受けて今回開発された多波長分光検出器では、分光器とアレイ検出器により、レーザー波長を中心としてその両側に現れる回転ラマン散乱光スペクトルの形状を高い波長分解能で捉えることができるため、精度良く気温を推定することが可能になったとする。

また、ソフトウェア制御によって回折格子の角度を変えることで計測波長を調整できることから、光学系の高度な調整技術を必要としないという優れた点も備える。ただし、課題もある。回転ラマン散乱光スペクトルの波長の中心に現れる強い弾性散乱光により生じる迷光が、正確なスペクトル計測を妨げ、気温推定精度を低下させる要因となっていたという。そこで今回の研究では、弾性散乱光による迷光の影響を1000万分の1にまで減衰させる多波長分光検出器を開発することにしたとする。