具体的には、硫化物固体電解質に「Li3PS4薄膜」、電極に「LiCoO2(001)エピタキシャル薄膜」を用いて、薄膜型全固体電池が作製されたというが、この作製された電池は正常動作しなかったという。

そこで、Li3PS4とLiCoO2の界面に厚み10nm程度のLi3PO4固体電解質が緩衝層として導入したところ、電池動作に成功したとする。また、電池内部抵抗の評価が実施されたところ、緩衝層の導入によってLi3PS4とLiCoO2間の界面抵抗が導入前の1/2800にまで低減し、これが電池動作の改善につながったことが判明したという。

  • 作製された薄膜型全固体リチウム電池の模式図

    (a)作製された薄膜型全固体リチウム電池の模式図。(b)Li3PS4硫化物固体電解質とLiCoO2電極の界面に、緩衝層としてLi3PO4酸化物固体電解質を導入した場合の模式図。(c)Li3PO4緩衝層を導入しない場合のサイクリックボルタンメトリー法による測定結果。鋭いピークは観察されず、充電・放電反応が起きていない。(d)Li3PO4緩衝層(厚さ10nm)を導入した場合の測定結果。3.9Vvs.Li/Li+で充電・放電反応が示された (出所:東工大プレスリリースPDF)

さらに、この界面抵抗低減のメカニズムの解明に向け、透過型電子顕微鏡(TEM)による界面構造観察や、エネルギー分散型X線分光法と電子エネルギー損失分光法による界面周辺の構成元素や電子状態の分析が行われ、TEMでの観察から、Li3PS4とLiCoO2の界面で、固体電解質の構成元素の1つである硫黄(S)のLiCoO2電極への拡散とともに、LiCoO2表面近傍での構造の変化が観察され、化学反応層が形成されていることが判明したとする。加えて、構造変化に伴って、界面近傍においてLiCoO2電極のコバルトが還元していることも確認されたという。

  • 透過型電子顕微鏡法による界面の観察像

    透過型電子顕微鏡法による界面の観察像。(a)Li3PS4とLiCoO2の間に化学反応層が形成されている。(b)Li3PS4とLiCoO2の界面にLi3PO4緩衝層が導入されたところ、Li3PO4とLiCoO2の界面が原子レベルで秩序立った構造が堅持された。LiCoO2内の明るい白丸は、Co原子が層状に分布している様子が反映されている (出所:東工大プレスリリースPDF)

対照的に、Li3PO4緩衝層が導入された界面では、硫黄の拡散やコバルトの酸化状態の変化が見られず、LiCoO2(001)表面が原子レベルで堅持されている様子が観察されたとのことで、これらの結果から、界面における高抵抗のメカニズムは、固体電解質と電極間で発生している化学反応層に起因しており、緩衝層はその化学反応層の形成を抑制していることが示されたとする。

なお、研究チームでは、今回の研究成果は、全固体リチウム電池の高性能化に向け、界面抵抗の起源を解明するための基礎的研究として重要な成果といえると説明しており、今後は、今回の研究成果に基づいて、全固体リチウム電池のさらなる高出力化のための界面設計指針の確立に向けた研究を進めていくとしている。