ソニーセミコンダクタソリューションズは、セキュリティカメラ向けのCMOSイメージセンサ「IMX675」を商品化し、2022年8月からサンプル出荷を開始すると発表した。
撮像画像の全画角出力と任意の特定領域の高速出力を同時に実現する業界初のCMOSイメージセンサで、「必要な領域のみを高速に読み出すことで、全画素だけを読み出す従来方式に比べて、データ容量の削減効果と、システムコストの削減、カメラシステムに対する負荷軽減に貢献できる。高付加価値化が進むセキュリティカメラは継続的に需要が拡大しており、安心、安全の実現に貢献できる」(ソニーセミコンダクタソリューションズ イメージングシステム事業部統括課長の有田祐治朗氏)とした。
IMX675は、対角6.53mmとなる1/2.8型のイメージサイズを持ち、有効画素数は約512万画素のCMOSイメージセンサで、独自のデバイス構造により従来比で約30%の消費電力の削減を実現しているという。
「これまで培ってきたイメージセンサ技術の知見、生産技術を組み合わせて、高い性能を実現した。画素チップと回路チップを積層構造にしたのに加えて、Cu(銅)-Cu接続による回路構成の柔軟性を活かし、高速な信号処理回路を最適なレイアウトで複数配置。全体的に放熱部品点数を削減したり、それに伴うコストダウン、環境負荷低減にも貢献している。長時間の連続稼働が求められるセキュリティカメラの用途に適している」とした。
IMX675の最大の特徴は、Dual Speed Streamingの搭載である。
通常のイメージセンサでは、ひとつのセンサからは設定した1種類の画像データしか出力できないが、Dual Speed Streamingでは、撮像画像の全画素を毎秒最大40フレームで出力すると同時に、任意に設定できる特定領域の高速出力が可能であり、情景の全体像に加えて、詳細な情報を捉えたい対象物を高速に認識することができる。
「交差点や高速道路などのモニタリングにおいて、範囲が違う全体と特定領域の2種類を撮像することで、全体は低フレームレートにより大まかに把握しながら、高いフレームレートによって車両の詳細認識などを行う用途を想定している。全体を把握しながら、大事なポイントを逃さず、データサイズも抑えられる」という。
たとえば、全画素40fps、縦方向12.5%の320fpsで撮影した場合に比較して、全画素を20fps、縦方向25%の80fpsにした場合には、50%のデータサイズの削減が可能であり、全画素を10fps、縦方向12.5%の320fpsにした場合には、37.5%のデータサイズの削減ができる。「これにより、データ量を適切にマネジメントできる」とした。
もう1つの特徴は、高感度と広いダイナミックレンジを実現する独自技術の「STARVIS 2(スタービス ツー)」を採用している点だ。
独自のプロセス技術により、画素サイズの制約があるなかでも、受光部の面積を広くすることが可能になり、広いダイナミックレンジを実現することができるという。
「STARVISは、セキュリティカメラ用CMOSイメージセンサ向けに開発した2面照射型の画素技術であり、2013年から実用化。セキュリティカメラで求められる暗所での視認性に優れ、低照度でのモニタリングにも適している。ドライブレコーダーにも採用されている」という。
STARVIS 2では、STARVISで培ってきた低照度性能に加えて、ダイナミックレンジを拡大。肉眼では見えない状況でも、色や形を正しく捉え、安心および安全の確保が可能であるほか、単露光方式のHDRであるClear HDR技術により、モーションアーチファクトが出ないという。
同社によると、STARVISでは、1μm2あたり、2000mV以上の感度を有し、可視光領域に加えて、近赤外領域をもカバーして、高画質を実現。さらに、STARVIS 2では、単露光において、同画素サイズのSTARVISと比べて、8dB以上の広ダイナミックレンジを有するという。
サンプル価格は1518円で、年内に量産を開始する。
セキュリティカメラは安定的に成長している市場であり、ソニーセミコンダクタソリューションズでは、セキュリティカメラ市場においては、2021年度実績で56%の世界シェア(金額ベース)を持っているという。また、同社のCMOSイメージセンサの対象となるドライブレコーダーやウェブカメラなども継続的な市場成長が見込まれている。
「当社のCMOSイメージセンサは、厳しい撮像環境が求められる中でも堅牢性に優れた最適な商品といえ、低照度の環境でもノイズが少ないといった強みがある」などとしている。