Armの日本法人であるアームは7月8日、Arm本社のChris Bergey氏によるラウンドテーブルを開催し、同社のインフラ事業の現状の説明を行った。それほど新しい話題があった訳では無いが、現状のArmのNeoverseに関する状況の説明が行われたので、これをまとめてご紹介したいと思う。

  • Chris Bergey氏

    Photo01:Chris Bergey氏(SVP&GM, Infrastructure Line of Business)。同氏の職分(つまりNeoverseの製品ライン)は以前はDrew Henry氏の担当だったが、Henry氏は現在SVP, Strategy and Operationsという職にあり、Bergey氏が2019年の入社後はHenry氏に変わって掌握している

同氏の職分は、肩書の通りInfrastructure Businessである。要するにサーバーやNetwork向け全般に跨る(Photo02)。

  • Networking&Edge

    Photo02:Networking&Edgeに関して言えば、例えば旧Freescale(現NXP)が以前からLayerscapeシリーズなどを出していた訳だが、ここに示された大半はむしろソフトバンクによる買収後に急速に加速した感がある

さまざまなシリコンパートナーがNeoverseシリーズを採用

特にNeoverseシリーズの発表後、さまざまなシリコンパートナーが相次いでこれを採用した事で、この流れは急加速した感がある(Photo03)。

  • Neoverse E1の採用事例はあまり聞こえてこない

    Photo03:まだNeoverse E1の採用事例があまり聞こえてこないのがちょっと気になるところ。まぁCloud向けというよりはEdge向けではあるのだが……

実際Ampere(旧AMCC)やMarvell(旧Cavium)は、いずれも自社で開発したコア(AmpereならX-Gene系列、Marvellなら旧BroadcomのVulkan)を捨ててNeoverseに鞍替えした訳で、その意味でもNeoverse系列はすでに大きな成功を収めつつあるとして良いかと思う。

この結果として、多くのパートナーがNeoverseをベースとしたエコシステムの構築をスタートしているとし(Photo04)、例えばクラウドに関して言えばAmazon AWSを利用するTop 50のカスタマのうち48が、Armベースのインスタンス(というかGraviton2のインスタンス)を利用しているとする(Photo05)。

  • Photo04:左側が5G関連、右側がCloud関連

    Photo04:左側が5G関連、右側がCloud関連となる

  • もちろんGraviton2のインスタンス「だけ」で処理が済むわけではないとは思う

    Photo05:もちろんGraviton2のインスタンス「だけ」で処理が済むわけではないとは思うが、何かしらの形で利用している事そのものは事実だと思う

またNeoverse N1ベースの「Ampere Altra」は、すでに多くのCloudで採用されている(Photo06)。

  • AWSがGravitonシリーズを外販していればまた話が変わったのかもしれない

    Photo06:AWSがGravitonシリーズを外販していればまた話が変わったのかもしれないが、あくまでもAWSの利用に留めたが故にAmpere Altraが広く利用されるようになった、という側面はあったとは思う

もし仮にAmpereがX-Geneベースのコアの利用に拘っていたら、ここまで広範に採用されたのか? というのは疑わしい。これに関してはAmpereの立ち上げを行ったRenee J. James(元Intel COO)の判断が正しかったというべきなのだと思う。MicrosoftはAmpere AltraベースでAzureのインスタンスを構築しており、Ampereが今後も広く使われるかどうかはともかく、Armベースのインスタンスが今後クラウドサービスで増えてゆく事は間違いないだろう。

  • Neoverseを選ぶ事のシリコンベンダーにとってのメリット

    Photo07:Neoverseを選ぶ事のシリコンベンダーにとってのメリットは、開発コストを抑えながら高い性能を維持できる事だが、逆に同種のSoCが他のシリコンベンダーから登場する可能性もあり、その場合に同じNeoverseであれば乗り換えが容易、つまりクラウドプロバイダーからするとベンダーロックインが掛かり難いのは、シリコンベンダーにとってデメリットでもある。このあたりをどう判断するかは現状ではまだ難しい