具体的には、外径8mm、内径6mmの硼珪酸ガラス管の内側に注射針(16ゲージ、先端90度カット)を差し込み、この注射針に高電圧(12.5kV、10kHz)を加え、ガラス管外側に巻き付けた電極を接地することでガラス管内部に誘電体バリア放電を発生させる。このガラス管内部に注射針を通して液体を注入するだけでナノミストが生成されることが確認された。

開発された手法では、水性の液体のみならず、比較的粘度の高い油性の液体でもナノミストを生成できるという。ミスト粒子の大きさを計測したところ、大部分で観察に用いた顕微鏡レンズの空間分解能である400nmを下回るサイズであることが判明したほか、液体を分速10~100μLで送った場合、効率よくナノミストを生成できることも明らかにされたとする。

  • レーザーシート光源で可視化したナノミスト生成の様子

    レーザーシート光源で可視化したナノミスト生成の様子(リン酸緩衝生理食塩水の場合) (出所:農工大Webサイト)

なお、同技術は、薬剤をナノサイズ化し経皮吸収を促進させることで対象部分に持続的に送達可能にする技術としての応用が期待できると研究チームでは説明しているほか、従来の静電噴霧法と比べて、ナノミスト生成機構(硼珪酸ガラス管電極)の内部で電気的に閉じた回路となっているため、高い安全性能を有するナノミスト化技術として提案できるともしている。

今回、ナノミスト生成の検証が行われた液体は、超純水、リン酸緩衝生理食塩水、ヒマシ油の3種類で、そのすべてでナノミスト化が可能であることが確かめられたとするほか、生成されたミスト粒子も大部分が皮膚のバリア機能を通過できるサイズとなっているという。また、今後は、同手法で作製された薬液ナノミストの経皮吸収特性を詳細に明らかにすることで、薬剤吸入、経皮吸収促進、高浸透化粧品などの技術開発の研究に貢献していくとしている。