理化学研究所(理研)、独・ダルムシュタット工科大学、東京大学(東大)、東京工業大学(東工大)の4者は、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」(RIBF)の多種粒子測定装置「SAMURAIスペクトロメータ」を用いて、4個の中性子のみで構成された原子核「テトラ中性子核」の観測に成功し、陽子を含まない複数個の中性子が原子核を構成して存在できる新たな証拠を得えたことを発表した。
同成果は、理研 仁科加速器科学研究センター 多種粒子測定装置開発チームの大津秀暁チームリーダー、理研 同・センター スピン・アイソスピン研究室のバレリー・パニン特別研究員(現・客員研究員)、同・ザイホン・ヤン基礎科学特別研究員(研究当時)、同・上坂友洋室長、ダルムシュタット工科大のメイテル・デュア研究員、同・ステファノス・パシャリス研究員(研究当時)、同・トーマス・オウマン教授、同・アレキサンドラ・オバテリ教授、東大大学院 理学系研究科 附属原子核科学研究センターの下浦享教授(研究当時)、ラッツロー・スタール研究員、東工大 理学院物理学系の栂野泰宏特任助教(研究当時)、同・近藤洋介助教、同・中村隆司教授、東北大学の小林俊雄教授(研究当時)らを中心とした、90名を超える研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。
単独の中性子は約15分で崩壊するため、これまで中性子のみの原子核は存在しないとされてきた。しかし、2個の中性子系は存在しないことが明らかにされているが、3個以上の中性子のみの原子核が存在できるのかどうかは長らく不明であったという。
そうした中、2015年に理研RIBFにおいて、テトラ中性子核の観測に成功。しかしこのときは、テトラ中性子核の生成が4事象のみであったほか、テトラ中性子核が束縛状態と共鳴状態のどちらなのかを決めるのに、質量の精度が不足していたという。そのため、この実験だけでは共鳴状態にあるテトラ中性子核の確定には至らず、新たな実験データが必要とされていた。
そこで研究チームは今回、2015年の実験とは異なる手法により、テトラ中性子核の生成・観測を目指すことにしたという。