大阪大学(阪大)と日本原子力研究開発機構(JAEA)は6月20日、カルシウム40(40Ca)の「超変形状態」から球形の基底状態への崩壊遷移が予想外に抑制されており、質量数50以下の原子核で最も強く抑制されたものであることを明らかにしたと発表した。

同成果は、阪大 核物理研究センターの井手口栄治准教授を中心に、オーストラリア国立大学、JAEA、東京大学、インド・ガンジー工科経営大学の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

原子核は通常、球形もしくは回転楕円体(ラグビーボール型あるいはミカン型)の形状をしており、回転楕円体の多くは長軸対単軸の比率がおよそ1.3:1以下だが、中にはその比率が2:1という、超変形状態と呼ばれる大きく変形したものがあることが知られている。

超変形状態は、現在ではさまざまな原子核の励起状態として存在することが理解されている。放射線を何本か出すことによって徐々にエネルギーを失い、最終的には基底状態へと遷移する。しかし、ほとんどの場合、超変形状態からほかの励起状態を経由せずに球形の基底状態へ直接遷移する過程は観測されておらず、その崩壊メカニズムが解明されていなかったという。

そこで研究チームは今回、40Ca原子核で、超変形したスピン0の励起状態からスピン0の基底状態への崩壊遷移の観測を試みることにしたという。