横浜国立大学(横浜国大)と東京工業大学(東工大)は5月30日、今後、耐用年数が過ぎて廃棄量の増加が予想される太陽光パネルに含まれるシリコンに見立てて、太陽光パネル製造で排出されるシリコンウェハを還元剤として活用することで、CO2のギ酸・メタノールなどへの約7割という高い収率での触媒的合成に成功したことを発表した。

同成果は、横浜国大大学院 工学研究院の本倉健教授(東工大 物質理工学院 特定教授兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行するエネルギーに関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Energy Advances」に掲載された。

CO2を排出しないことから再生可能エネルギーへの注目度が高まっており、中でも、太陽光パネルは一般家庭での導入も進んでいる。しかし、太陽光パネルは耐用年数はおよそ30年といわれており、2050年頃には世界においておよそ6000万~7800万トンものパネルが廃棄されることが予想されている。

太陽光パネルのリサイクルにおいて課題となるのが材料として用いられているシリコンの扱いで、現状ではその明確なリサイクル方法は確立されていない。発電セルに利用されているシリコンはパネル全体の重量当たり2~3%ほどだが、大量にパネルが廃棄されることとなれば、その量はおよそ120万~234万トンと試算され、そのままの廃棄は、新たな環境問題を生むことが懸念されるため、リサイクル方法の開発が必要とされている。

そこで研究チームは今回、太陽光パネルの製造工程で排出されるシリコンウェハを還元剤として活用し、CO2を有機資源へ変換する触媒反応の創出を試みることにしたという。そして、還元剤としてシリコンウェハが活用可能であることを見出し、CO2をギ酸やメタノールなどの有用な有機化合物に変換する触媒反応の創出にも成功したとする。