産業技術総合研究所(産総研)は5月13日、大気中の400ppm(0.04%)という低濃度の二酸化炭素(CO2)や、発電所や産業分野から排出される最大で20%程度のCO2から、液体燃料や化学品製造の原料として汎用性の高い合成ガスを直接製造する技術を開発したと発表した。

同成果は、産総研 エネルギープロセス研究部門 エネルギー変換プロセスグループの倉本浩司研究グループ長、同・笹山知嶺研究員、同・高坂文彦主任研究員らはオランダ・デルフト工科大学の浦川篤教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、CO2再利用に関する分野全般を扱う学術誌「Journal of CO2 Utilization」に掲載された。

CO2から合成ガスを製造するには、水素との反応によってCO2を一酸化炭素(CO)に還元する逆シフト反応(CO2+H2→CO+H2O)が利用されるが、この逆シフト反応を効率的に進行させるためには、従来、活性の高い白金や銅などの遷移金属が触媒成分として必要と考えられてきた。

また、大気中に含まれるCO2の濃度は400ppm、発電所や工場からの排ガスでも最大で20%程度のため、逆シフト反応操作の前にCO2を化学吸収プロセスで分離回収し、100%近い濃度にまで濃縮する必要もあった。

しかし、この分離や濃縮に要するエネルギー消費やコストが高いことから、低濃度のCO2から分離や濃縮工程を経ることなく、直接合成ガスを製造できる技術が必要とされるようになっており、近年、CO2の吸収・変換機能を併せ持つ二元機能触媒を用いた新たな技術が注目されるようになっているという。

今回、研究チームでは、産総研が過去に開発したアルカリ土類金属を主成分とした二元機能触媒を用いて、大気濃度のCO2から分離や濃縮工程を経ることなく、液体燃料や化学品製造に適した組成の合成ガスを製造することを目指すことにしたとする。