開発された砂型の材料は、比較的安価なことが特徴とするほか、この砂型は通常の砂型鋳造法と同様に鋳型に予熱を与えることなくチタン合金を鋳造することが可能だという。また、従来の砂型で鋳造した合金は、砂型と反応して表面が焦げたような状態となり、溶解材に見られる金属光沢のある表面性状ではないが、今回開発された砂型で鋳造した場合、合金と砂型との反応が見られず、溶解材料と同様に金属光沢が確認できたとする。

これにより、従来の砂型で作製したチタン合金の鋳造品では、硬く・脆い反応層が表面からおよそ250μmの厚さで形成されてしまっていたが、今回の砂型による鋳造品では、表面からの硬さはほぼ一定であり、その値は元の溶解用Ti-6Al-4V合金材料の硬さとほぼ同等で、表面反応層の生成は見られないことも確認されたとしている。

また、砂型によるTi-6Al-4V合金に対する引張試験が行われた結果、この鋳造品の強度特性は、ASTM規格で規定されている鋳造材と塑性加工材(棒材)の規格値以上であり、特に破断伸びに関しては鋳造材の規格値の2倍以上、塑性加工材の規格値の約1.3倍が示されたという。

  • Ti-6Al-4V(64Ti)合金鋳造品に生じる表面反応層の発生状態の比較

    (左)Ti-6Al-4V(64Ti)合金鋳造品に生じる表面反応層の発生状態の比較。(右)開発された砂型で作製されたTi-6Al-4V合金鋳造品の強度特性・延性特性の測定値、ならびにTi-6Al-4V合金の塑性加工材および鋳造材のそれぞれの規格値 (出所:産総研Webサイト)

なお、開発された砂型は予熱なしの常温で鋳造が可能なため、溶融チタン合金の凝固速度が比較的速くなり、結果として金属組織が緻密になることで、優れた特性が示されたと考えられるとしている。

今後は、実製品に近い形状や大型のチタン合金部品についても作製を検討していくとのことで、開発された鋳型を用いたチタン合金の砂型鋳造技術の開発を進めることで、国産の大型チタン合金部品の安定供給を実現し、日本の製造業に貢献していきたいとしている。