佐賀大学とアダマンド並木精密宝石は5月10日、ダイヤモンド半導体によるパワー半導体デバイスを用いて、従来の出力電力記録345MW/cm2を2倍以上更新する875MW/cm2を計測したこと、ならびに出力電圧2568Vを達成したことを発表した。

同成果は、佐賀大理工学部 理工学科 電気電子工学部門の嘉数誠教授、同・サハ・ニロイ博士研究員、アダマンド並木精密宝石の金聖祐氏、同・小山浩司氏、佐賀大理工学部 理工学科 電気電子工学部門の大石敏之教授ら共同研究チームによるもの。詳細は、IEEEが刊行するエレクトロニクスと電子デバイスに関連するすべての分野を扱う学術誌「IEEE Electron Device Letters」に掲載された。

現行の半導体ではパワー不足となってしまうなどの理由から、現在でも地上放送局や通信衛星では真空管が用いられることがあるという。しかし、真空管は半導体に比べ効率が低く、寿命が短いことが課題となっており、高信頼化に向けて高出力・高動作周波数に対応できるパワー半導体の実現が求められる状況になっているという。。

  • Beyond 5G利用に向けた半導体の高周波化・高出力化の必要性

    Beyond 5G利用に向けた半導体の高周波化・高出力化の必要性。ダイヤモンド半導体を実用化できれば、現在真空管が担っている領域を半導体が担えるようになる (出所:プレスリリース資料PDF)

SiCやGaNなど、次世代パワー半導体の活用が進むが、より高性能なパワー半導体の実現が期待されているのがダイヤモンド半導体であり、理論上ではシリコンに比べ、約5万倍の大電力高効率化ならびに約1200倍の高速特性を有するという。

  • ダイヤモンドの優れた物性から期待されるデバイス性能

    ダイヤモンドの優れた物性から期待されるデバイス性能。理論上、ダイヤモンドはSiCやGaNよりも遥かに優れた性能を備える (出所:プレスリリース用資料PDF)

しかし、ダイヤモンドはその加工の難しさから、性能向上などに課題があったという。今回の研究では、大口径ダイヤモンドウェハ結晶の原子レベルの表面平坦化技術として、アダマンド並木精密宝石が開発したダイヤモンドの表面を原子レベルで平坦にするCMP技術を採用することで、表面の加工変質層を除去することに成功。キャリアによる電気抵抗を約半分に減少させることとなり、ダイヤモンド半導体の高性能化が可能になったとする。

  • 平坦化技術の活用で性能が向上

    原子レベルで平坦なダイヤモンドウェハ結晶の製造技術を用いて、キャリアによる電気抵抗が約半分に減少した (出所:プレスリリース用資料PDF)

なお、今回のダイヤモンド半導体で記録となった出力電力875MW/cm2は、すべての半導体材料の記録で見ると、米マサチューセッツ工科大学のGaNによる世界記録2096MW/cm2に次ぐ2位となるという。

また、研究チームでは今後、周辺技術の開発によりダイヤモンドパワー半導体デバイスの性能向上に取り組むとともに、実用化に向けた研究開発を加速し、人工衛星に搭載できる送信用パワー半導体デバイスの実用化に取り組むとしている。