そこで研究チームは今回、マグヌス法を用いてモルモットから摘出した胃底平滑筋での5つのプロスタノイド(PGA2、PGD2、PGE2、PGF、PGI2)とU46619(トロンボキサン(TX)A2誘導体)により誘発される収縮反応に対するDHAおよびEPAの抑制効果を検討。同時に、その効果を植物油脂に多く含有されるリノール酸(LA)の抑制効果と比較することにもしたという。

そして実験の結果、DHAおよびEPAは、検討したすべてのプロスタノイドおよびU46619によって誘発される収縮反応を有意に抑制することが確認されたとする。LAは、DHAおよびEPAと比べるとその抑制効果は弱く、PGD2とU46619によって誘発される収縮のみを有意に抑制したとする。

DHAおよびEPAの作用点を推定するため、RT-qPCR法を用いて、胃底平滑筋に発現する収縮性プロスタノイド受容体(TP、FP、EP1、EP3)のmRNAの発現量の比較が行われたところ、プロスタノイドTP受容体およびEP3受容体のmRNAの発現量が多いことが見出されたとする。

そこで、各種プロスタノイドおよびU46619による収縮反応に対する、選択的TP受容体拮抗薬および選択的EP3受容体拮抗薬の効果が検討され、それらの効果とDHAおよびEPAの効果との間の相関が調べられた。その結果、DHAおよびEPAによる抑制効果と選択的TP受容体拮抗薬による抑制効果の間には、正の相関が認められたが、選択的EP3受容体拮抗薬による抑制効果との間には正の相関が認められなかったという。

このことから、DHAおよびEPAのプロスタノイドによる収縮反応に対する抑制効果には、TP受容体に対する拮抗作用が重要な役割を果たすことが判明したほか、DHAおよびEPAのTP受容体以外の作用点を推定するため、高カリウム溶液により誘発されたVDCCを介した収縮反応に対するこれらの脂肪酸の効果についての検討も実施されたところ、DHAおよびEPAはVDCCを介した収縮反応に対しても有意な抑制効果が示されたとする。

そこで、各種プロスタノイドおよびU46619による収縮反応にVDCCが関与する可能性を検討するため、これらの収縮反応に対するVDCC抑制薬の効果が検討されたところ、いずれの収縮反応もVDCC抑制薬により抑制されることが確認されたという。

なお、これらの知見は、TP受容体とVDCCが胃底平滑筋のプロスタノイド誘発性収縮を即時的に抑制する際のDHAとEPAの標的となることを示すと研究チームでは説明している。

  • 今回の研究成果の概要

    今回の研究成果の概要 (出所:東邦大Webサイト)