電気通信大学(電通大)、理化学研究所(理研)、高輝度光科学研究センター(JASRI)の3者は4月18日、ポータブル超強磁場発生機ながら77Tを実現した「PINK-01」を開発し、X線回折実験を行ったところ、超強磁場中で物質の結晶構造が変化する様子を詳細に観察することに成功したと発表した。

同成果は、電通大大学院 情報理工学研究科の池田暁彦助教、東京大学 物性研究所の松田康弘教授、理研 放射光科学研究センターの久保田雄也 基礎科学特別研究員、JASRIの犬伏雄一主幹研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、米物理学会が刊行する応用物理学を扱う学術誌「Applied Physics Letters」に掲載された。

非常に強い磁場中では、物質の新規な電子・磁気・結晶状態が生まれると考えられているが、100T級の非常に強い磁場を発生させるためには、世界でも限られた大型施設でしか利用することができなかった。

また、先進的量子ビームを利用すれば、超強磁場中での物質のミクロな電子・磁気・結晶状態観測をすることが可能だが、これらの施設も同様に大型であり、その上、強磁場施設と併設されていないために、超強磁場中でのミクロ観察は困難とされてきた。

こうした背景を踏まえ、研究チームは今回、運搬が可能な小型パルス超強磁場発生装置の開発に取り組むことにしたとする。そして、全重量が1トンを下回るポータビリティを備えつつ、77Tの超強磁場を発生させられるPortable INtense Kyokugenjibaの1号機、略してPINK-01を完成させることに今回成功。従来のポータブル磁場発生装置の最高磁場は40Tほどであったことから、倍近い性能向上を果たしたこととなる。